2018年ロシアワールドカップ最終予選日本代表対UAE代表の試合が行われた。
この試合文字通り絶対に負けられない戦いでありここで負ければワールドカップ出場が厳しくなるような試合だった。アジア予選でも余裕になれないほど今アジアのサッカーのレベルは上がってきている。
現に日本代表もUAEアラブ首長国連邦相手に二連敗を喫しており、どこかで苦手意識があり、更に中東アウェーという状況で3度目の敗戦が不安視されていた。
しかしその心配は稀有に終わる。
23日深夜に行われた試合の結果は2-0で日本代表が実力を見せ切り勝ちきった。
久しぶりに楽しい日本代表を見れた試合であり、ここにきてようやく日本代表に希望の光が見えてきたような試合だった。試合自体も非常に面白くUAE代表も見ごたえがあった。その感想をいくつかの内容に分けて書いていきたい。
1:次世代エース久保裕也の誕生
いま欧州にいる日本人選手で最もゴールを決め乗りに乗っている久保裕也がこの試合スタメンだった。右サイドに配置され攻撃的なプレーを求めらていた。その起用に答えなんと1G1Aを記録。全ての点に絡みこの試合はまさに久保裕也の試合でもあった。
久保神を崇めるスレッドを立ててほしいぐらいに久保神というクオリティを見せつけた。重要な先制点を角度のないところから決め、更に今野へのドンピシャクロスのアシスト。
自分は熱烈な本田圭佑ファンだが、この試合で完全に世代交代の時が来たなと感じた。まさにかつて本田圭佑が当時のエースに引導を渡したように久保裕也が「ここは俺でしょ」と右サイドの定位置を確保した瞬間だった。代表初ゴールをまさかこれだけ重要な一戦で決めるとは。本田圭佑は言った「成り上がる時は1ゴールでもなりあがる」
まさか久保裕也がその1ゴールを決めて、その通りになるとは思わなかった。本田圭佑の後継者が今ここに誕生した。
しかし本田圭佑自信のプレーも決して悪くなかった。試合終了間際の10分にまるでACミランで何度も見たようにクローザーとして登場。そのわずかな時間で攻撃的なプレーを見せ相手に脅威を与えた。本田圭佑はスーパーサブとしてはまだ十分通じそうである。試合勘がほとんどなかったにもかかわらずあれだけのプレーを見せたことは賞賛に値する。しかしスタメンとしてはもう久保裕也の時代だろう。「右サイドは俺でしょ」というガツガツしたギラギラ感のある若手がここに登場した。かつての本田圭佑を彷彿とさせる新エースの登場だ。
2:ブンデスリーガ組躍動
この試合原口元気、大迫裕也、香川真司らアタッカーが別格のクオリティを見せた。原口は左サイドを躍動し何度も脅威になりさらにデュエルを怠らないインテンシティの高さを見せつけた。乾が呼ばれない理由もわかるし、宇佐美は絶対に原口にもう勝てないだろうなとも感じる。
大迫勇也の安定感はまさに半端無いだろう。中西君のいっていることは間違っていなかった。間違いなく半端無い。
ついでに言えば最近話題の某ユーチューバーにも似ている。この試合を見ていた人は日本代表にはじめしゃちょーがいると思ったに違いない。安心してください、大迫勇也は三股しませんから。野球にはダルビッシュというユーチューバーがいるが、サッカーには半端無いユーチューバー大迫勇也がいる。
試合終了間際に負傷したが、どうやら軽傷らしく一安心でもある。とにかくこの試合の大迫の安定感はすさまじかった。ブンデスリーガでフォワードとして活躍する秘訣として「体を相手に預ける」といっていたがその預けるプレーが随所で見受けられた。
後半にあった半端無いヘディングが決まっていれば久保裕也と並ぶMVPになっていたに違いない。
そして香川真司はここにきて復活を遂げている。代表に来た時の香川が好きでない自分でもこの試合の香川真司は別格だと感じた。最近香川真司はドリブルを積極的にするようになっている。自分が好きだったころの香川がようやく戻ってきたように感じる。
やはり香川はドリブルが上手いしドリブルをしたときに脅威になる。
ブラジルワールドカップの時のビビってい消極的なプレーをしてギリシャ戦で外された男の姿はもうなかった。確実に精神的に成長しトップ下、インサイドハーフとしてのクオリティを示した。リベンジとなるロシアワールドカップでの期待がかかる。
更に言えば結局のところ日本人にもっとも向いているリーグはブンデスリーガだろう。所属先がバラけた方が良い、よりレベルの高いリーグでともいうが日本人はもうブンデスリーガに選手生命かけるぐらいの考え方をした方が良いのかもしれない。
この試合出番のなかった清武も、少し前までは香川以上の存在で香川はもう終わったと言われていた。セビージャは少し分が悪かった部分があるが、仮に清武がブンデスリーガ内でステップアップを目指していたらどうなっていたかなというのはある。
更に大迫や原口のプレーを見ても本当に十分なほど高いクオリティを示しており、ブンデスリーガでここまで成長できるのかということを示した。更にこの試合には欠場しているが長谷部誠がキャリアで最も充実した時間を過ごしている。改めてブンデスリーガと日本人の相性の良さは再評価されても良いのではないだろうか。
3:確実に根付きつつあるハリル流デュエルサッカー
この試合、日本代表が見違えるように完成度の高いチームに生まれ変わっていた。ここにきてついにハリル流のサッカーが根付いてきている。まるでブラジルワールドカップのアルジェリア代表のような高いインテンシティを持つチームに近づきつつある。
このデュエルをもっとも体現しているがやはり前線のスリートップの3人だろう。
原口、大迫はもはやデュエルの申し子というぐらいにデュエルしている。
「すべての局面で勝つ」といっていた原口はその強さを見せつけた。
攻撃に移り変わるスピードも格段に進化しており、攻撃的な姿勢をUAEアウェー戦で示すことができた。その3人以外にもとにかく全員がハードワークやデュエルをするチームで見ていて本当に頼もしいし楽しい。チリ代表を見ているような気分にもなったし、日本人にはこういうやり方が向いているとも感じた。こういうガツガツしたデュエルの中で元来持っている日本的なテクニックが輝く。
自分はハリル体制について「途中グダグダでもいいからとにかく最後笑うチームになってほしい」と常々主張してきた。途中いくら完成度が高くて楽しくしても最後惨敗すれば何の意味もなくなる。それよりは途中は暗黒時代でもいいからワールドカップ本番で勝つチームが理想。ハリルは批判されながらもそのプロセスに着実に取り組んできていた。ようやくここにきてその本質が開花してきたように思える。
もしかしたら今回のスタメンがほぼロシアワールドカップのスタメンになるのではないかというような完成形に近づいてきている。いろいろな試行錯誤の末ついにハリルが目指すデュエルサッカーの完成度が80%に近づいて来たかなという印象だ。
ロシアワールドカップまであと1年少し。この1年少しの時間で残りの20%を磨き上げられれば本番サプライズを起こす国になれるかもしれない。
4:アジアのサッカーが面白くなってきている
この試合UAE代表のクオリティの高さも見ごたえがあった。特にオマル・アブドゥラフマンは見ていて非常に楽しい選手だと思った。今までは負けてる試合が多かったからなかなか鑑賞する余裕がなかったが、今回いい試合だったのでじっくりオマルのプレーを堪能することができた。
非常に意外性のあるボールタッチと、ずらしたタイミングで繰り出される縦パスなどがファンタジーさを感じさせて見ごたえがある。じっくり余裕持ってみられる試合ではこれだけ楽しい選手だったのかと思ったし後半出てきたもう一人のアフロもなかなか面白かった。アフロがアフロにパスをするシーンがあり、これが噂の偽オマルかと衝撃を受けた。チームとしての完成度も非常に高く、これだけテクニカルなプレーをするチームは今までアジアになかったので楽しく試合を見ることができた。
今までのアジアのチームと言えばお世辞にもうまいテクニック系のチームは多いと言えず、日本だけがその中で異色だった。今回アジアにも見ていて面白いチームが出てきたなと感じさせられる試合が多く、アジアでサッカーが徐々に発達してきているなとも感じた。
5:総評
やはり一番なのは勝てたことであり、その上に内容も面白かった。次世代の選手がかなり高いレベルに成長してきているという事もポジティブな要素でありようやく光が見えてきたなというような試合だった。
やはりサッカー日本代表はこうでなくてはならない。ロシアに向けて少しずつ希望が湧いてきているように思える。ワールドカップまであと1年ちょっと。いよいよ日本代表は仕上げの年に入ってきているなという感想だ。