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もし韓国語にハングルが無かったらどうなっていただろうか

韓国語と言えばまず真っ先にハングルが思い浮かぶだけでなく、韓国自体のイメージにもなっているほど象徴的な文字だ。

ハングルのデザインについては魅力的な文字だと考える人もいれば、禍々しい呪文のような文字だと考える人もいる。

そのように好みは分かれるがいずれにせよ韓国語、あるいは朝鮮語の個性になっていることは間違いない。

 

ハングルの歴史をさかのぼれば西暦1446年に公布された訓民正音に行き着き、その歴史は現代で使用されている文字としては比較的新しい。誰が考案したか、いつ作られたかという歴史が解明されており、「人工的な文字」として韓国人はそこに誇りを抱いていると言われている。

 

自分は彼らが主張するようにハングルが世界一優秀な文字だとまでは思わないが、確かに合理的な要素は存在することは認めている。世宗大王が考案されているとされているが、当時の科挙に合格した両班階級出身の官僚が創設しただけあって確かに理路整然とした作りになっている。

 

ハングルの文字としての特性を端的に言い表すならば「表音文字でありながら漢字の構造を持つ文字」と考えれば分かりやすいかもしれない。

元々李氏朝鮮自体が中国の影響下にあり、歴史的にも漢字文化圏に属してきたため当然ながら漢字の影響が見られる。

似た様な例で言えば日本語の表記に使われる平仮名や片仮名が、漢字から借用し簡略化した文字であることは日本人ならば誰もが習う事だ。

 

ハングルにも漢字に使われるデザインが多く使われており、漢字の素養がある人ならば実は非常に書きやすく読みやすい文字である。

そしてハングルと片仮名の最大の違いは、ハングルは構造面でも漢字的な要素があるという事にある。

漢字の偏や作りと言われる書き方、例えば「さんずい」や「しんにょう」と言ったものがハングルにも応用されている。

そのため一つの文字に最大で4つの音節を加えることが可能であり、少ない文字数で多くの表現が可能となる。

かつてツイッターの開発者が「日本語はチート」とツイートし、144文字における表現力が長けていることを指摘していたが、実は韓国語も同じようにツイッター向きの言語だと言える。

 

むしろ表音文字としてみた場合、日本語以上に短く表現できる場合も存在する。

日本語の場合漢字と併用して使っているので、基本的には平仮名と片仮名だけで表記しなければならないという状況はほとんど存在しないが、仮に表音文字限定で表記するとなればアルファベット程ではないが文字数は多くなる傾向にある。

 

例えば「日本」をひらがなで表記する場合「にっぽん」となり4文字を要するが、韓国語の場合일본(イルボン)の2文字となる。

また「大韓民国」についても日本語の場合、「だいかんみんこく」と8文字に飛躍するが대한민국(Dae han min guk)となり文字数では元の漢字表記と変わらない。

ただし日本語の場合、ごく普通に漢字表記を使うためわざわざ表音文字だけで表記する必要は限られているため、これが言語の表記法の優劣を表すわけでないことは留意しておかなければならない。

 

言語の優位性については、韓国語の発音が日本語より複雑であることは言語学的に事実であり、韓国人は日本語を勉強したときにその発音が簡単だと感じる人が多いようである。

確かにK-POPアイドルを見ていても、日本語が堪能なメンバーは多く、韓国人が習得しやすい言語であるという説には一定の信憑性がある。

確かに韓国語は日本人が勉強した場合、とても難解な発音があるのは真実だ。

しかし仮に「発音が複雑な言語は優秀な言語」という説が成立するのであれば、ギネスブックに世界で最も難しい発音がある言語として登録されたこともあるチェコ語が世界一優秀な言語になるだろう。

ポーランド語やウクライナ語も発音が難しいが、はたしてそれらの言語が優秀かどうかは分からない。

 

むしろ発音の面では比較的簡単な日本語が国際的に評価されている論文や著書は多く、日本文学は源氏物語の時代から始まり、川端康成と大江健三郎と2人のノーベル文学賞受賞者を輩出している。

そのため発音が難しい言語が優秀だという考え方は眉唾物だと言わざるを得ない。

このように言語にはそれぞれ長所と短所があり、そこに優劣をつけようとする考え方自体がナンセンスだ。

 

韓国語

その一方で「主観」で判断した場合にはもちろん世界中のあらゆる言語にそれぞれの魅力が存在する。

ここでようやく韓国語にハングルが無かった場合どうなっていたかという本題に入ることになる。

もし仮に韓国語、朝鮮語にハングルが無かった場合、言語としての魅力や個性は今よりも限られた物であった可能性が高い。

 

「ハングルが無い韓国語」を具体的にイメージしようと思うならば、ベトナム語を想像すれば分かりやすいだろう。

ベトナム語は元々漢字文化圏に属していたため漢字の影響を受けており、かつては「チュノム」と呼ばれるベトナムでローカライズされた文字が使われていたこともあった。

しかし今は基本的にアルファベットでの表記が主流になっており、それは伝統的な歴史上の文字の範疇を出ない。

主観ではあるがベトナム語と韓国語ならば後者の方がより個性的に見え、アルファベットにしたからといってその言語の人気が高まるかと言えばそう簡単ではない。

ただしベトナムは人口9000万人の人口大国でもあるので、ベトナム語は今最もアジアで需要のある言語の一つと言っても過言ではない。

 

また東アジア圏で独自の文字を持ちながら現在では西洋伝来の文字を採用している言語でいえばモンゴル語がその代表格だ。かつてはモンゴル文字が存在したが、今ではやはりキリル文字での表記が主流となっている。

 

ハングルが無い韓国語をより分かりやすく言えば、ローマ字で表記した日本語のようになっていた可能性もある。

敗戦直後、日本でもローマ字併記に転換するという運動が行われたことがあったがそれは現実化することが無かった。モンゴル語やベトナム語と異なり、日本語と韓国語はそれぞれ自国産の文字と漢字を併用する形を取った。

 

戦前に時間を戻すならば、当時の朝鮮にハングルという固有の文字が存在しなかった場合、おそらく現在の北海道地域で使われていたアイヌ語と同様に、片仮名がその表記に使われていたのではないかと自分は考えている。しかしながら当時の朝鮮にはハングルという独自の文字が存在したため、日本語の教育を除いてはある程度ハングルが尊重される場合もあった。

 

その後1945年に韓国と北朝鮮が日本から独立を果たし、いざ近代の朝鮮語をどう表記して行こうとなった時、ハングルが存在しなければ当時の為政者は大いに迷ったはずだ。

北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国の金日成はおそらく漢字表記を模索したのではないか。当時の北朝鮮は中華人民共和国と共産圏として同盟関係にあり、「簡体字」と呼ばれる簡略化された漢字をそのまま応用していた可能性が高い。

 

逆に当時の韓国は西側に属しており、初代大統領の李承晩はアメリカ留学経験者でもあるためシンガポールと同様にアルファベットを採用していたのではないかと考えられる。現在でも韓国と北朝鮮では元々同じ言語でありながら違いが存在しているが、ハングルが無かった場合、それぞれ漢字とアルファベットという別々の道を辿っていただろう。

北朝鮮は中国に近づき、韓国はシンガポールのようになっていたのではないだろうか。

「アジアNIES」という言葉のようにかつては新興国として肩を並べていた韓国とシンガポールは共通点が多い。

 

韓国は今も英語教育に力を入れており、仮にハングルが無かった場合はシンガポールのように産業化や国際化のために事実上の英語圏になっていたシナリオも想定できる。

ハングルがあったからこそ自国の言語を純化する方向に向かい、実際に韓国語の個性を確立することに成功したのも事実だ。例えば「海苔巻」を「キムバプ」にし、「カラオケ」を「ノレバン」にしたのが具体例だ。

ハングルがなければシンガポールやインドのように英語圏にはなっていたかもしれないが、その一方で現代の韓流文化は存在していなかっただろう。

 

韓流は存在しても「シンガポール流」は存在しないが、その一方でシンガポールは客観的に見れば日本を超えてアジアで最も先進的な地域となっている。

シンガポールには「シングリッシュ」と呼ばれる英語のピジン言語やクレオール言語のような言葉が存在するので、ある程度英語での意思疎通は可能である。

そのため国際化自体は非常に容易かったという側面は存在するが、逆に言えば日本文化や韓国文化のような国際的に愛好される文化を生み出すことはできていない。

 

韓国や北朝鮮が自国言語の純化運動に使う労力を、英語、あるいは中国語の普及に使っていれば国際化はできたかもしれない。

その一方でやはり自国の個性的な文化や伝統は失われていただろう。

ベトナム語やピンインで表記される中国語のように、アルファベットで表記されている韓国語は、確かに読みやすいかもしれないがその一方で魅力は半減する。

中国東北部、旧満州地域に多く在住している朝鮮族の人々や中央アジア地域の高麗人が使う朝鮮語を聞くと、確かに現代韓国語と共通する部分は多いが発音上は中国語の方言のように聞こえる場合がある。

それらの例を鑑みればハングルがあったからこそ中国語との違いを確立し、現代の韓流やK-POPのような文化を生み出せたという側面は事実だと言えそうだ。

 

文字が言語に与える影響はこうして考えてみれば非常に大きい。

日本語もローマ字表記ならば今日のような状態になっていたかはわからない。

アルファベットやローマ字で表記される韓国語、 それは確かに読みやすいがどこか淡白な印象を受ける。

もしハングルが韓国語に無ければ中国と日本語、そして英語が入り混じった限定的な地域の言語になっていたのかもしれない。

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