6月15日に開幕戦が行われるロシアワールドカップが目前に迫っているのにも関わらず、世間の注目は閑散としている。
それどころかもはや自分自身、いまいち今回のワールドカップに向けて精神的に盛り上がることができておらず冷めている。
冷静に考えて未だに新体制による試合を本大会前に一試合も見れていないという状況はやはりおかしい。5月30日にガーナとの練習試合を行う予定ではあるが、一体こんなもののどこに価値があるというのだろうか。
もういっそのこと何をしてくるか予想がつかないぶっつけ本番作戦というクレイジーなことを行うとでもいうのだろうか。
事前に知られていたという陰謀論は諸説あるが、これではまるで奇襲攻撃に打って出た真珠湾攻撃のように思えてならない。
源平合戦における一ノ谷の戦いにしても、織田信長が今川軍を破った桶狭間の戦いにしても、日本人は相手の予期していない奇襲攻撃が好きなのだと考えると今回の西野ジャパンに期待できなくはない。
もう開き直って対戦国には「テスト勉強してない」というふりをして、裏ではしっかり策を立てているというパターンで挑んでもよいのかもしれない。
サッカーは時折運にも左右されるのでマークシート形式とも似ている。
奇跡が起きてグループリーグ突破どころかベスト8以上に進む可能性もあるわけでも、もうこうなったら選手たちもやけになるしかないだろう。
下手に「自分たちのサッカー」を準備して挑んだ前回大会どうなったかを考えると、これぐらいが丁度良い可能性だってある。
それにしても正直なことを言えば、こんな4年後になっているとは思ってもいなかった。
先日、自分の中でワールドカップムードを盛り上げようと4年前に録画していたW杯特集番組をいくつか見て当時の思い出を振り返った。
岡田武史のワールドカップ32日間の熱狂を見つめる旅、三浦知良が民放のW杯特集のインタビューに応じる姿、NHKが丁寧に作り上げた総集編で中田英寿が語る姿、それらを今見るとこの惨状が残念でならない。
まだせめてハリルホジッチとこの航海に出ることを決めていれば決心がついたのかもしれないが、あの土壇場の解任劇で冷めたサッカーファンも多いだろう。
4年前のW杯特集でハリルホジッチが高頻度で登場したのだが、その姿を今見るととても悲しくなった。
岡田武史が日本代表のグループリーグの敗退後に「もう自分の中でワールドカップが終わった気がする。ワールドカップは4年後までやってこない」「世の中は起こる必要がある事しか起こらない、これで日本のサッカーもう一度考え直せと言う事」と語っていたことも、今では虚しい。
三浦知良が地道なサッカーの発展を継続することを唱え、中田英寿が路線は間違っていなかったと語った4年後がまさに今現在だ。
岡田武史だけでなく、選手として出場した吉田麻也も初戦で本気に成れなかったこと悔やんでいたことが印象深い。
コロンビア戦の前半のような戦いを最初からできていればまた違った結果になったのかもしれない。そして今回もそのコロンビアと対戦することになっている。
積み重ねてきた戦術や自分たちのサッカーなどもはやどうでもよく、とにかく今回は本気で最初からやるしかない。
それにしてもこの4年間、日本サッカー自体明るいニュースが無かった空虚な暗黒期だったように思う。すぐに思い浮かぶことでいえば、岡崎慎司がレスターでプレミアリーグ制覇の一端を担ったことと、クラブワールドカップで鹿島アントラーズがレアル・マドリードに迫ったことぐらいだろうか。
それ以外で特にこの4年間、日本サッカーにワクワクしたことは覚えていない。
選手としても長友佑都はインテルにいないし、本田圭佑もACミランにいない、香川真司もマンチェスター・ユナイテッドから去っている。
かと言って他にビッグクラブに移籍した選手がいるわけでもなく、進んでいるような停滞しているような時期だった。
しかしマクロな視点で見ればこういった4年間も必要だったと言える日が来るかもしれない。
「思ったような未来はやってこない」というのは個々人の人生においても同じで、ブラジルワールドカップ後に新しい人生に向かって行こうと思っていた人ほど現状の自分と、日本代表の有様を照らし合わせて思う事があるかもしれない。
まさか自分もこのような状況でロシアワールドカップを迎えるとも思っていなかったし、なおかつこんな日本代表を見ることになるとも思っていなかった。
清武弘嗣なんて「次のワールドカップではキャプテンマークを巻いていたい」と語っていたけれど、まさかこんなことになっているとは予想もしていなかったはずだ。
コロンビア戦で当事者として悔しさを味わったはずの柿谷曜一朗も、残念ながらもう日本代表からは部外者として扱われている。
松潤に「もう一度あの景色を見たい」と夢を語っていた内田篤人も虚しく今は帰国している。
なんだかんだで息が長いのが長谷部誠と長友佑都で、本田圭佑と香川真司がかろうじて滑り込む生命力をみせようとしている。
かろうじて期待できるとするならば堂安律と中島翔哉がワールドカップ後に何かできるかだが、一時代を築いた選手たちの後ではきっと物足りないだろう。
本田圭佑の時代を最後にもう日本のサッカー熱も今後かつてのように世界に向かっていく熱狂を取り戻すことは無いかもしれない。
久保建英と中井卓大に期待がかかるが、おそらく彼らが成熟する時代には現代サッカーのアスリート化が更に進んでおり、なおかつ身体能力が高い選手が技術まで兼ね備えているようになっている時代がやって来る。
そもそも今の子供たちや若い世代が、世界やスポーツに憧れるということ自体が無くなってきているのではないか。
まだサッカー選手は子供の将来の夢としてはトップを争っているが、今後スポーツに興味が無く、楽しそうなユーチューバーになりたい世代や、将棋の藤井聡太のように頭脳で大人に挑むことに憧れを見出す子が増えていくだろう。
少子化の時代に子供たちの憧れが変わり、更に日本人の志向自体が海外よりも内向きなものに変わってきている。
コンテンツとしてのサッカー観戦文化も日本人のライフスタイルに定着することは今後さらに難しくなっていくはずだ。
わざわざ日本人がサッカーを見る必要が無いと言えばそれまでで、ワールドカップの結果次第では大谷翔平や白井健三、宇野昌磨を見ている方が楽しいという時代になっていくだろう。
ある意味昔の日本に戻っていくというか、世界に憧れることに夢や興味を持たない閉鎖した時代に回帰するのではないか。
目前に迫りながらも、ワールドカップというものがこれだけ魅力を失いつつある今、日本人は自国で完結するものにしか目を向けなくなっていくようにも思う。
日本人もサッカーを必要としていないし、世界のサッカーも日本人を必要としていない。今後日本の衰退を考えるとジャパンマネーすら必要とされない時代が来るのが現実だ。
かろうじて世界に憧れていると言えばむしろ女子であり、TWICEに憧れて世界のスターを目指すというような前向きな憧れを持っている若い世代は今日日もう女性にしかいない。
はっきりいって世界で一番有名な日本人はサッカー選手でないことは当然ながら、もはやスポーツ選手ではなく、むしろTWICEのミサモの3人のような気さえしてくる。
今時新しい考え方に満ちて元気なのは女性がほとんどで、男性は時代についていけなくなりつつあると自分でも感じずにはいられない。
とにかく今はワールドカップだという明るい気分にはなれないし、今の自分ではW杯を心の底から楽しめそうにはない。
そしてそれは多くのサッカーファンにも共通しているように思う。
しかし前回、本番前の期待と熱狂が一瞬で崩れ去ったように、今回は不安と無気力感が一気に別の感情に変わることだってあり得る。
テスト勉強していないというブラフであることだけを内心期待しながら本番までの残された時間を過ごしたい。