アルゼンチン人サッカー選手の代名詞と言えば「左利き」であり、レフティの選手はアルゼンチンの育成基準では重要視されているという話さえ存在する。
その数多の天才レフティの代表的選手と言えばディエゴ・マラドーナ、そしてリオネル・メッシの2人だ。
最初メッシも無数に存在する「マラドーナ二世」の一人でしかなかったが、今はもはや「メッシ一世」となりアルゼンチン代表の歴史において並び立つ存在となっている。
ワールドカップさえまだ獲得できていない物の得点記録や出場記録はもはや伝説の領域に達しつつある。
そしてその綺羅星のごとくスター選手が誕生するアルゼンチンに新たなる選手が現れ始めた。
パウロ・ディバラ、アルゼンチンの新星、そしてメッシの後継者だと騒がれている選手だ。欧州挑戦の始まりはセリエAのパレルモ、そして現在はユベントスで伝説的エースナンバーの10番を背負っている。
更にはアルゼンチン代表において憧れを公言するリオネル・メッシとの共演も果たし、30代に差し掛かるメッシの新たなる後継者として誰もが注目することは必然だと言える。
しかしこの風潮に合えて自分は疑問を呈したい。
率直に述べるのであればディバラはメッシになることはできない、比較できるレベルの選手ではなく数多く存在するアルゼンチン人アタッカーの1人という表現の方が適切だ。
リオネル・メッシですらようやく20年の時を経てマラドーナの後継者として登場したのに、メッシが現役時代にこうも簡単に現れるような存在ではない。
ディバラがメッシの後継者だというのは、すなわちディバラはマラドーナの後継者でもあるということを意味する。そう考えた時あまりにも格が落ちる、そう言わざるを得ない。
まずディバラは大舞台にそれほど強くなく、20代前半からバルセロナのエースとして伝説を作り続けてきたメッシとは既に同年齢の時点で開きがある。
そういった風格は存在せず、「繊細な天才」の域を出ない。
メッシやマラドーナの十八番ともいえるドリブルに関しても、ディバラのドリブルは不十分であり全てを破壊するような突破力は存在しない。あくまで良い場所でボールを受けた時天才的なドリブルを披露することができるだけで、あらゆる場所からドリブルで創造する力は足りていない。
メッシやマラドーナのドリブルは条件を問わないが、ディバラのドリブルはまだ限られた時や場所やでしか通用しない。
例えばディバラがレアル・マドリードやバイエルン・ミュンヘン相手に単独で中央突破をしゴールを決めるイメージが沸くだろうか、否だ。
現時点でセリエAのユベントスという圧倒的なチームに所属している選手としても、セリエA下位のクラブチーム相手に無慈悲ともいえる活躍はできていない。
そして得点力に関してもまだ不十分であり、彼にチャンピオンズリーグの舞台で一試合5ゴール決める能力は存在しない。
現状はあくまでユベントスというセリエAにおいて突出しているチームの一つの駒という立ち位置に過ぎず、ユベントスを更なるレベルに引き上げるような選手ではない。
現状メッシどころか、ユベントス時代のカルロス・テベスのような圧巻の活躍もできておらずアグエロやテベスの領域に迫ることがまずは当面の目標だろう。
しかしこれはあくまでマラドーナやメッシという確実にサッカーの歴史においてトップ5に入るような選手と比較しているからであり、パウロ・ディバラ自身が次世代のサッカー界を賑わせてくれる選手であることは間違いない。
メッシという異常な存在と比較することはディバラにとってもプレッシャーになるかもしれない。
ディバラの目標として理想はメッシではなく、むしろデル・ピエロなのではないかと自分は考える。ユベントスの10番と言えばその華麗なイメージにふさわしいのはアレッサンドロ・デル・ピエロだ。
ディバラにはその美しさと品格が存在する。
テベスはユベントスの10番という華麗なイメージというよりも荒々しいタフな選手だったが、ディバラにはその姿が似合う。ヨーロッパの舞台では現状セリエAのみの挑戦という意味ではスペインのみでプレーしているメッシと対を成すかもしれない。
メッシがスペインで伝説を作ったのならば、ディバラはイタリアで伝説を作るという物語も考えられる。
仮にディバラが一度諦めかけたチャンピオンズリーグ制覇をもう一度もたらすことができたならば、その時がメッシとの比較が始まる時だ。
移籍の噂は常に付きまとうがユベントスの10番を背負ったディバラがその背番号を全うする覚悟を持った時、新たなるアルゼンチン人のスター選手が誕生する日が始まるだろう。