先日スペインリーグの強豪FCバルセロナに加入することが決まったブラジル代表だが、バルセロニスタからの評価は散々のようだ。
現地バルセロナのスポーツ紙が採ったアンケート調査でも85%がその獲得に納得しておらず、またインターネット上のフォーラムでも「がっかり移籍」として取り扱われている。
更に世界的にメジャーな個人情報発信SNSにおいてかつてFCバルセロナとその本拠地であるカタルーニャ地方に対して侮辱的な発言をしていたことが取り上げられ、既に雲行きが怪しくなっている。
バルセロニスタ1「ヴェラッティが来ると思っていたら、なぜかパウリーニョが来ていた。何を言ってるかわからねぇと思うが(以下略)」
バルセロニスタ2「まだあわてるような時間じゃない。そのうちコウチーニョとデンベレが来る」
バルセロニスタ3「第一志望のレアル・マドリードからオファーが無くても、金さえもらえれば信条さえ変えて嫌いなバルサに来るのか」
ほんの数か月までまでマルコ・ヴェラッティが来るとウッキウキだったらネイマールに出て行かれやって来たのがパウリーニョなのだからもうバルサオタの心はボロボロだ。
しかし自分はこの移籍を今回好意的に捉えようとしている。
サッカー界においてこういう地味な補強が当たるというケースはよくあるもので、「まさかここまでフィットするとは思っていなかった」と良い意味で期待が裏切られる可能性もある。
もしかしたらバルサ新加入のパウリーニョはこのクラブの停滞を打破する救世主になれるかもしれない。
レアル・マドリードのカセミロを見てもわかるように南米の守備的選手は上手いイメージがない選手ほど実は上手く実は効いているという渋い重要性を発揮することが多い。
欧州の守備的な選手は文字通りテクニカルではないが、南米サッカー選手は意外な選手ほど上手い、いや狡猾だといったほうが的確でありチームのためになることが多い。
今のバルセロナに必要なのはこういう選手であり、これからもセルヒオ・ブスケツを起用し続けるのであればセットプレーの強さやいわゆる「汚れ役」のようなタスクをこなせるパウリーニョは有用なオプションになるだろう。
セルヒオ・ブスケツという選手は非常にインテリジェンスに優れており、誰もが「頭が良い選手」と絶賛する一方でその長身の割にはフィジカル的にタフではないという側面がある。もちろんブスケツが守備で効いていないというわけではないのだが、全盛期に比べて下り坂にあるのは事実でもある。
これからの数年間でブスケツのウィークポイントが露呈されるケースが増える事は十分考えられるため、パウリーニョはその部分を補う選手になり得る。
仮にバルセロナが今後も伝統的な4-3-3のフォーメーションを続けるのであればブスケツをピボーテに配置し、ラキティッチとパウリーニョのインテリオールとしてタッグを構成させるという中盤はその相乗効果が発揮されれば安定感があり強豪相手にも通用する可能性を期待できる。
現代サッカーは再びフィジカルが重視される時代に突入しており、バルセロナであってもこれからはこういった役割の選手を軽視できなくなる。
FCバルセロナは名だたるメガクラブと覇権を争いリーグ戦やカップ戦を戦うことが至上命題とされているクラブだ。
そういった強豪チームを相手に戦うことを想定するのであれば、その有用性が証明される試合を目撃することになるかもしれない。
パウリーニョをバルセロナの人々が不安視する理由は主に2つある。
それはプレミアリーグのトッテナムで通用しなかったこと、そしてここ数年中国スーパーリーグに在籍していたため欧州での試合勘に疑問があるという事だ。
まずプレミアリーグで通用しなかったことはあまり参考にならない。サッカーの質や傾向がスペインとイングランドでは異なるため一概に比較できない。シェフチェンコやベロンがプレミアリーグで通用しなかったからと言ってその実力に対する評価は変わらない。
更にブラジル代表においてもハットトリックを演じるなど活躍しており、仮に2013年のコンフェデレーションズカップでルイス・グスタボとドブレピボーテを形成していた頃ならば今回の移籍は泣いて歓迎する程誰もが良い選手だと認めるのではないか。
この数年間プレミアリーグで挫折を味わい、中国スーパーリーグに移籍し欧州の表舞台からは消え去っていたが依然としてセレソンにおいてはその存在価値を証明し続けている。
中国スーパーリーグでの活躍は名高く、日本人にとってもAFCアジアチャンピオンズリーグでの対戦からその能力は印象深い。
一度欧州から離れた選手が再びその地へ回帰し、それもバルセロナのようなメガクラブに移籍することができるとなれば今後更にこういった地域をまたいだ移籍は増加していく傾向になるかもしれない。
サッカーのグローバル化は留まることを知らず、もはやヨーロッパとそれ以外の地域で区分すること自体がナンセンスな発想になるだろう。新興リーグに渡ることがワールドクラスとしてのキャリアを終えることを意味しなくなる時代が訪れる。
そういう意味でパウリーニョが中華人民共和国からスペインに渡った今回のケースは今後欧州サッカーだけでなく、世界の移籍市場を左右するのが今回の移籍と言える。
またこのパウリーニョの移籍はネイマールマネー狂騒劇の序章に過ぎず、ドルトムントのウスマン・デンベレ、リヴァプールのフィリペ・コウチーニョがクライマックスに控えているのではないかと推察されている。今最も欧州サッカー界を騒がせるトピックスといえばこの2人によるビッグディールだろう。
バルセロナ自体がすでに前体制に行き詰っており、ネイマール自体はメガクラックであることは間違いないのだがその負の側面も大きかった。
今回の移籍を悲観的に捉えることも可能だが、仮にその移籍金により全体的な戦力が充実を見せ、チーム内のヒエラルキーが正常な状態に復帰すると考えれば今回の出来事は前進と捉えることもできる。
「サッカーの世界は何が起こるかわからない物だ、どうなるか様子を見てみよう」という聞きなれたフレーズがこの状況には相応しい。