いよいよ8月31日に日本代表がオーストラリア代表とワールドカップ出場を欠けて試合を行う。
この最終予選で日本代表がホームで試合を行えるのは最後であり、同時にこの試合を逃せば突破にも暗雲がさしかかることになる。
オーストラリアかサウジアラビアのどちらかに勝ちさえすれば問答無用で突破が可能だが、どちらも引き分けか敗戦というケースの場合非常に厳しい状況に陥る。
そのためテレビでは恒例の「絶対に負けられない戦い」と報道されているが、今回は本当に絶対に負けられない状況なっている。試合の重要度がこれまでとは違い、ハリルホジッチ監督も「選手にはサムライになってほしい」と語っている。
サッカー日本代表はなんとなくいつも予選をしているように感じるかもしれないが、今回は本当に大事な一戦でありいつもとは少し雰囲気が違う。
最終予選で突破を決めることができなければ何が起こるかというと「地獄のプレーオフ」送りになる展開が待ち受けている。
厄介なことに韓国代表と激突する可能性が非常に高く政治問題に発展する可能性も不可避という程に危機が迫っている。更に突破を決めた場合もアメリカ代表化パナマ代表が待ち受けている。
個人的な考え方を述べるのであれば「プレーオフに行くのも悪くない」と考えている立場であり絶対に負けられないと言いつつも、負けてもまだ敗者復活戦は残されている。
ホームでオーストラリアと対戦しようが、アウェーでサウジアラビアと戦うことになろうがどちらも余裕をもって二連勝できなければロシアワールドカップ本戦で勝てないともいえるが、一度プレーオフで鍛えられることも悪くはないだろう。
自分の中で2014年のブラジルワールドカップは非常にトラウマになっており、予選を楽に突破して「歴代最強」と煽られることにはもう懲りているため緊張感のある予選を楽しみにしている感情も無いわけではない。
出場がゴールではなく本戦で活躍することを考えれば、予選で苦労しておくことはチームの経験値として重要な意味合いを持つ可能性も否定できない。
更にもっと言えば日本代表が出場できなかったとしてもワールドカップ自体は楽しみだとも考えている。
ブラジルワールドカップまでの大会に比べて、今大会は自分も少しはサッカーファンとして成熟しているのではないかと思っており絶対に日本代表に出場してほしいと考えているわけでもない。
もちろん日本代表に出場してもらいたいとも思っているし、実は密かにベスト8進出を期待している自分もいる。ハリルジャパンはアジアで華やかに勝利を重ねるチームではなく、本戦で強豪国相手に勝つチームを目指しているというのは自分の一貫した主張であり何らかのサプライズが起きるとも見ている。
しかし「サッカー」という競技自体が好きになっており、また他に応援するナショナルチームも存在するため日本代表の出場有無に関係なく本大会を観戦したいとも思っている。
決して「サッカーに日本は必要ない」と考えているわけではないが、出場しなくても楽しめるぐらいにはサッカーが好きになってきている。
そもそもワールドカップ出場というのは当たり前ではなく、強豪国や中堅国でも出場を逃すことはそれほど珍しい事ではない。
ブラジルW杯においてセンセーショナルな活躍を果たし、日本のグループリーグを阻止したコロンビア代表も実は南アフリカワールドカップには出場できていない。
スウェーデン代表として予選に敗退したイブラヒモビッチが「俺が出場しないW杯は価値がない」と発言し、元ブラジル代表のロナウドから「イブラ来いよ」と誘われた騒動を見てもわかるように有名選手ですら出場できない事実がある。
正直なところ自分自身「ワールドカップに日本が出場して当たり前」という感覚しか持っていないため、一度その大会への出場は難しいという感覚を取り戻すべき時期なのかもしれない。
2026年のワールドカップからは出場枠が48ヵ国に拡大されるため実質的に出場危機が取りざたされる大会は今回か次の大会が最後になるだろう。
その意味で今回これだけ出場権を逃す危険が迫っている緊張感というのは新鮮味もあり、古参サッカーファンがよく懐かしんでいるアジアの出場国が2枠だった時代の緊張感に近い物も感じる。
まさにプレーオフ送りにされる事態になればその緊張感の再現ともなり、不謹慎ながらそのことを望んでいるファンも多いのではないか。
そして仮に出場を逃した場合でも、前述のように2018ロシアワールドカップを楽しみたいとも思っている。
ただでさえ盛り上がりに欠けている今大会の扱いが更に小さくなることは間違いないだろう。本当にサッカーが好きなマニアだけが細々と盛り上がっている状態にしかならず、どこのスポーツバーも閑散とし日本代表が出場権を逃したことに萎えたサッカーファンがサッカー自体への興味も無くすかもしれない。
現状でさえ世間の扱いは空気と化しており、このままいけば2016年リオ五輪を越えられない大会となるだろう。リオ五輪において日本選手団が非常に活躍し最多メダル数を獲得したということもあるのだが、現状のサムライブルーを見ていると彼らの活躍を超えることは難しい。
重要な試合でさえBS放送に格下げされ、世間でサッカーの扱いは小さくなるだろう。
「自国が参加するお祭り」というのは日本だけに限らず多くの出場国にも言える事であり、自分が参加しない隣町のお祭りのようになってしまうだろう。
日本が参加するワールドカップが地元のお祭りだとすれば、地元の関係ない隣町のお祭りは余程の祭り好きでしか盛り上がらないことと同じだ。
地元のお祭りは詳細な日程も分かり花火も家から見えるが、隣町のお祭りはいつの間にか始まっていて縁がなければ行く事も無いのと似ている。
ワールドカップも日本が参加していなければ大部分の日本人にとっては遠くでやっているお祭りでしかない。
それでも日本が出場していない24か国時代のワールドカップも深夜のハイライト放送で見ていた世代はむしろ今の扱いが恵まれていると考えるだろう。仮に出場を逃しても衛星放送やインターネット配信によってすべての試合を完全版の映像で楽しむことができる。
「ダイヤモンドサッカーで白黒映像がハイライトしかでしか放送されず、サッカー専門誌の文章や写真でしか楽しめない時代があったんだよなぁ」と語る人々もいるだろう。
自分自身そういう昔話は嫌いではなく今大会もし出場を逃せば、一度はマニアしか見ていない静かなワールドカップも楽しんでみたいとポジティブに考えてもいる。
キングカズどころか川渕キャプテンや釜本邦茂、木村和司、長澤まさみの実父が現役の日本代表だった時代に思いを馳せながらW杯を遠い憧れだと見る夏も悪くはない。
逆にそういう静かなワールドカップは本当に専門的な見地で語るコアなサッカーファンしか見ておらず非常に濃密な空間になる可能性もある。
実際にコパ・アメリカ南米選手権やユーロ欧州選手権などを見た場合はそういう空気になり、ほとんど日本人が参加しておらずともUEFAチャンピオンズリーグは盛り上がる。
日本がサッカーの国として成熟しているということは、日本人が参加していない大会や試合でも一定の盛り上がりを見せる光景に現れている。
基本的に日本人はスポーツの競技内容よりも日本人選手や地元のチームが参加しているという事を重視する国民性があるが、サッカーに限って言えば競技内容自体を見ているファン層が多い。
ワールドカップ決勝が早朝の放送だったとしても視聴率が良い事はその証左でもあり、チャンピオンズリーグ決勝も日本人選手が不在でも大きく盛り上がる。
ほとんどワールドカップが報道されていなかった時代に比べて、現在は日本が関係なくてもサッカー自体が面白いから見るという人々が非常に増えていることは間違いない。そしてそういう本当に競技の内容自体が好きなサポーターが増えたときにその国はサッカー文化が成熟した言うことができる。
もちろん今回のロシアワールドカップに我らが日本代表が出場し活躍することを望んではいるが、仮にそれが果たせなかったとしても本当にサッカーが好きな人だけで十分に盛り上がれる規模のファン層は存在するのではないだろうか。
今の時代に日本が参加しなかった場合ワールドカップがどのような扱い方を去れるかというのは見てみなければわからない。
本当に世間で空気のような扱いを受ける可能性もあれば、日本のサッカー文化が思っていた以上に成熟しているということに気付かされる事もあるかもしれない。
自国にしか興味がないという人もいれば、自国に興味はないが海外に興味があるという人もいる、そして自国も海外も興味があるという自分のようなファン層も大勢存在する。
日本が参加すれば面白さは倍増、しかし参加しなくても十分なほど面白い。
ワールドカップがそういった考え方をされる時代になればこの国のサッカー文化はもう一段階高みに差し掛かるのではないだろうか。