移籍市場のトラブルメーカーはまだ騒動の中心であることに飽き足らず、次なるサプライズの演出を考えていそうである。
ネイマールJrがレアル・マドリードに"禁断の移籍"を果たそうとするのではないかという話は、まだ不透明な現時点ですら重要な話題だ。
そもそも禁断の移籍と言われながらも別のクラブを間に挟めば穏便に移籍が成立してきたケースは多い。同じブラジル人ならばロナウドはバルセロナとレアル・マドリードで活躍し、両クラブのサポーターから愛されている。
ルイス・エンリケもミカエル・ラウドルップも実は両方に在籍していた選手であり、過去の例を探せば意外なほどありふれている。
ルイス・フィーゴのように直前までキャプテンとしてバルセロナに忠誠を誓っておきながら直接レアル・マドリードに移籍するという禁じ手を行えば批判に晒されるが、実はフィーゴ程騒動に発展したケースは稀だ。
例えばミカエル・ラウドルップも直接の移籍ではあったが当時はボスマン判決以前で外国人枠の問題があり、バルサで出場機会とポジションを失いやむ終えず移籍したという印象が強い。ピッチ上に立てる外国籍の選手が決まっていた時代にはラウドルップでさえバルサからの対談を余儀なくされた。
今回のネイマールの場合、バルセロナにとってはむしろ移籍後にチームが強化されたため今更ネイマールへの名残惜しさもない。
更にPSGというフランスのチームを間に挟んでいるという許容される要素がある。
余程ネイマールが手のひら返しのような形でバルサに敵対的な発言をすれば批判されるの可能性はあるが、今の所バルセロニスタがネイマールを敵視する理由は無いだろう。
個人的な感情で言えば今もネイマールにはなんだかんだで思い入れがある選手でもあるので、またスペインリーグで見ることができるならば歓迎だ。
更に最近のエル・クラシコには殺伐とした雰囲気が足りていないという意味でも、因縁や遺恨となる要素が欲しいという思いもある。
リーガ・エスパニョーラにおける伝統の一戦クラシコは単なる世界最高峰のチーム同士の試合ではない。
そこには民族対立やスペインの複雑な地域事情が絡む、そのため独特な様相を呈するところに魅力がある。
野球でも「最近は乱闘が少なくなった、ライバルチーム同士の選手が仲良くしているのは甘い」と考える人が存在するように、やはりサッカーでも因縁めいた試合は存在していて欲しいというのが自分の考えだ。
そう考えた場合ネイマールがリーガ・エスパニョーラに復帰し、ましてやそれがレアル・マドリードならばクラシコ自体は面白くなるはずだ。
バルセロニスタの理想としては「バルセロナを裏切ったネイマールがバルサに成敗される」というカタルシスを味わうだろう。スポーツの試合というのは本来そういう物なのだ。
またレアル・マドリードとしてもクリスティアーノ・ロナウドが高齢化し、以前ほどの能力をコンスタントに発揮することができなくなっているので後継者を探そうとしている事情がある。特にサイドからの突破力という意味では純粋なウィンガーやドリブラーではなくなりストライカー色が強くなっているC.ロナウドでは戦力として不十分だ。
もしエル・ブランコが新たなる銀河系の形成を画策するならそのターゲットはネイマールであってもおかしくは無い。彼らの哲学たるマドリディスモはスター選手を在籍させたチームを作るという信条に支えられている。
そしてネイマール・ジュニオール自身も自分のキャリアを現状のまま終えるつもりは無いはずだ。彼は野心家であり、更に欲に忠実だ。
クリスティアーノ・ロナウド後のレアル・マドリードでスターになり、世界最高の選手としてメッシを超えるというプロジェクトを思い描いていてもおかしくは無い。
現状ではパリ・サンジェルマンとしてもレアル・マドリードやバルセロナと並ぶ真のビッグクラブになろうとしており、ネイマールとしてもPSGにおいてC.ロナウドやリオネル・メッシのような象徴的な選手になろうとしている。
少なくとも今シーズンにおいてはベスト16に駒を進めたUEFAチャンピオンズリーグでの成功を夢見ているはずだ。
しかしPSCにビッグイヤーをもたらすというミッションはかのズラタン・イブラヒモビッチですら果たすことができなかったほど難易度が高い。今シーズンと来シーズンがネイマールにとっては様子見の時期なのではないか。
幸いにも彼はまだ若く様子を見る時間がまだ残されている。
そしてそれは同時にクリスティアーノ・ロナウドの本格的な衰えを待つにはちょうどいい時間となる。
狡猾なネイマールがそんな計算をしていても不思議ではない。
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