elken’s blog

ジャニーズとサッカーを中心にあらゆることを評論するブログ

マラドーナ躍動 1986年W杯決勝アルゼンチン対西ドイツ

現在FIFATVがyoutubeで過去のワールドカップの名試合のフルマッチ動画を上げている。

ステイホームしている世界中のサッカーファンにとってとてもありがたい。

 

今回自分が見たのはマラドーナが優勝を成し遂げた伝説の1986年ワールドカップの決勝だ。

まずこの大会、なんと言っても有名なのはイングランド戦の5人抜きゴールと神の手ゴールだ。そして次にベルギー戦だろうか。

そのため決勝の西ドイツ戦はそれらの試合ほどの知名度はなく語られることも少ない。

 

またマラドーナの試合をハイライトではなく完全に一試合見ること自体が少ない。実際自分もバルセロナ時代の試合を一試合見たぐらいで、完全に90分見たことは一試合しかない。

サッカーを語る上で、そして何よりマラドーナファンとしてこの度しっかり通して見てみることにした。

youtu.be

 

ネタバレというかもはやサッカーにおける歴史的知識として結果的にに3対2でアルゼンチンが優勝を決めることになるのだが、内容としては非常に見応えがあった。

いや、これ34年前の試合とはいえ多少画質が荒いくらいで今見ても十分面白い。

ユニフォームに名前が書いておらず、カメラワークがフォーカスしすぎて全体図が見にくいとはいえ、現代サッカーに近いコレクティブさや戦術の完成度はある。

多少、今と芝も荒くパス回しが比べてゆっくりしている部分はあり、基本フォワードはディフェンスの時にあまりプレスをかけずゆったり回している。

ただ現代に比べてシミーミュレーションは少ないし、タックルの激しさがエゲツない。

実際このコメント欄でも、「サッカーが商業主義やダイブに汚染される前の本当の男たちの戦いだった頃」という内容は多かった。

 

90分見通すには、英語実況をリスニングの勉強だと考えたり、そうした外国人の書き込みを読んだりしながらだと捗る。

面白かったのがおそらくスペイン語圏の方からの書き込みで「英語はチェスの試合でも解説しているかのように聞こえる。スペイン語はもっと熱がこもってるからスペイン語版も用意してくれ」みたいなコメントだ。これも複数あって確かにマラドーナのプレーはスペイン語版の方が情熱はある気がする。日本人からすると代表戦は松木実況じゃないと熱くなれないみたいなものだろうか。

逆にレトロな当時の解説をそのままにしてくれてありがとうみたいな意見もあった。

 

マラドーナのプレー内容の話に戻ると、やはりマラドーナ凄いなと。

今見ても、極めて現代的かつ魅力的な選手だ。

思っていた以上にヒールを使うんだなとか、あの独特な体型は唯一無二だなとか。ただ実況だと11番のバルダーノという選手がいて髪型も似ているし、わりと聞き間違うことは多かったので、これから見ようという方は気をつけてもらいたい笑

7版のブルチョガもいい選手だった。

西ドイツはマテウスとルンメニゲがこの時のタレントで監督はなんとあのベッケンバウアーだ。

 

ただその豪華なタレントの中でもマラドーナは別格だった。この試合ゴールこそ決めておらずマラドーナの試合として語られることは少ないが、最後の劇的な3点目はマラドーナのスルーパスによるアシストだし、試合通して狭いスペースでのワンツーの連携多く、バンバンとキーパスを出している。

この時の26歳だとは思えない程にプレーが成熟している。

しかも今のメッシ程守られていない。先程も述べたようにエゲツないファウルを喰らいまくる。カードがなかったペレの時代かと見紛う程だ。

 

更に面白いプチ見どころとして決勝アシストのちょっと前に一瞬ピッチの上で歩いている白い鳩が映る。この後に劇的なシーンが来るのだからもはや映画だ。

幸運の鳩が勝利を引き寄せたのだろうか。

コメント欄でも彼らの差が散々書かれていたが、やはりこういうドラマの部分がメッシとマラドーナの違いなのだろう。

決勝でドイツに勝つのがマラドーナで、負けるのがメッシだ。おまけに周りのタレントには恵まれている。

 

自分はバリバリのメッシ世代で、マラドーナの現役時代は知らないがサイン貰えるなら絶対にマラドーナを選ぶ。歴史上人物の領域なので、同じサッカーファンでもこういった歴史や文化の背景に興味がある人はマラドーナを評価する。

メッシはバルセロナのアイコンであっても、スポーツの枠を超えた存在ではないしラテンアメリカの英雄でもない。

先日チェ・ゲバラのドキュメント番組を見たばかりで南米の革命や抵抗の歴史に興味がある身としてはマラドーナに憧憬を抱かずにはいられないわけだ。

 

1980年代の純粋な頃のフットボールであったり、激動の20世紀であったり、その真っ只中にいたディエゴ・マラドーナという圧倒的ヒールでありスター、キャラが強烈すぎる。

 

賛否両論別れ、アルゼンチンは軍事独裁時代の八百長と神の手で2度もチートを使って優勝したという意見ももちろんある。こうしても世界中の人々が議論するところがこの競技の面白さだ。

「90年と2014年の決勝をアップしてくれ」というコメントも複数あったが彼らはきっとドイツ人だろう笑

次の大会がまた同じ組み合わせで今度はドイツが優勝するのもドラマだ。

「アルゼンチンがドイツにワールドカップで勝ったのはこの試合しかない」

「マテウスはマラドーナのマークで疲弊していた。次の90年大会ではベッケンバウアーはその役割を別の選手にしたことで成功した」などの書き込みもあり、海外のサッカーファンは歴史があってやはり詳しいなと感心した。

 

日本でも「擦り切れるくらい5人抜きのビデオを見た」という選手がいるくらい実際この大会のマラドーナに影響を受けたという選手は多いが、本格的にワールドカップが大衆的なコンテンツになっていくのは1998年フランス大会からだろう。

 

80年代の牧歌性と熱気の両方がこの映像にはある。

これぞワールドカップだという雰囲気だ。生まれてもいない時代を得意気に語るのもおかしなものだが、鉄道ファンが国鉄時代に憧れるような感覚に近いかもしれない。最近自分自身、キングカズの全盛期の全盛期などを見たりサッカーでも懐古趣味に目覚めている。

これまではわりと現代サッカー至上主義者だったのだが、最近の若手よりレジェンド選手の方が気になり出し始めた。

過去のことは想像力が無ければわからない。

過去のサッカーの戦術を分析するという見方より、まずは単純にその時代の雰囲気に触れるために映画やドキュメンタリーのような感覚で見てみるのもおすすめだ。