もう遠藤航を「地味な選手」と呼ぶのはやめよう。
パナマ戦、もっとも余裕を持ってプレーし効果的で美しいパスを出していたのは紛れもなく遠藤航だった。
「和製カンテ」「守備専としてワンボランチで固定すべき」という評価はもはや失礼にあたる。
確かにエンゴロ・カンテという選手は良いパスも出す万能プレイヤーなのだが、どうしても守備を強調されて評価されることが多いし、守備専という言葉も遠藤のプレーを見ていない。
もはや「守備強度の高いブスケツ」、あるいは「和製ヴェラッティ」という言葉が似合う。
ヴェラッティはイタリア流の華麗なレジスタでありながら、小さいのに本当にファイトする選手だ。
遠藤はフィジカルも十分にあり、デュエル勝率でブンデスリーガ上位でありながら、見事なまでにパスを通したり捌いきつつ、キープの守備もハイレベルでこなしていた。
サッカーは11人で行うスポーツなので普通、上手い選手がただ一人入れば何もかもがすぐ良くなるわけではない。メッシが一人では何もできないシーンだってよくある。なぜなら一人の選手がボールに触れる時間はとても短いからだ。
ただ、往々にして一人の選手でリズムが激変するということがサッカーでは起こり得る。
これはポジショニングの良さや、戦術の修正と色々理論的な要因はあるのだが、一番はオーラと信頼だ。
日本にとっては苦々しいドログバやハメス・ロドリゲスの投入を考察してもわかるように些細な信頼が大きな安心感と自信を生むことが多い。
今日の遠藤航にはそれを感じた。
間違いなく練習や普段の会話等で遠藤は代表チームメイト全員に信頼されている。人格や人間性の部分でも、技術の面でも、献身性や戦術理解度の面でも確固たる信頼が画面越しに伝わってきた。
サッカーの一流プレイヤーは「味方を強化する」という特殊能力を持っている選手が多い。典型的なところでは様々な出自を持つフランスをまとめたジダンがこの例に当てはまる。
バタフライ効果とでもいうべきか、ボランチの位置にいれば隣接する選手が前後左右常時5人前後はいるので、たった些細なプレーが次々と全体に伝播していきやすい。
そもそも遠藤が地味な選手というのも現地ドイツ語で評されたことであって、渋いいぶし銀というような玄人好みのプレーという意味合いで使われているのかもしれない。地味は褒め言葉でもある。
そして「試合が終わった後スタッツを見てみてめちゃくちゃ効いてるなぁ」という数値を出しているとか「詳細に分析しながら試合を見ているときに玄人好みのプレーをしてた」とかではなく、もはや今の遠藤は誰よりも正確にパスを出しリズムを優雅にコントロールしている。
つまりわかりやすく上手いし、そして巧い
技術が売りだとされる選手よりよほど余裕を持って綺麗な縦パスを入れてたりフィードをしたりしながらゲームメイクをこなしていたし、その様子を実況の風間八宏も絶賛していた。
そして普段のリーグで守備的ミッドフィルダーとして、おそらくアジア人史上最高レベルになれるプレーをしている。
ソン・フンミンがアジア人として異次元だと言われているけど、遠藤も大概ヤバいことやっているという笑
ここは日本のサッカーファンは自信というか誇りを失うべきではないと思う。
遠藤航の謙虚で堅実な性格上自らそういうことは言わないし、日本サッカーの偉大な先輩に対するリスペクトもあるので、彼はきっとまだまだだと言うだろう。
李忠成との対談動画で「センターバックもできるけどボランチで勝負すると決めて欧州に行った、あえてCBできると言わなかった」とポジションを定めることの重要性も説いているし、それだけボランチに対してこだわりがあるところも成功要因の一つかもしれない。
重要なのはいろいろなポジションをこなす経験すること自体は否定していないということだ。
ところで、今季本格的にブレイクの狼煙を上げ始めた遠藤、地味にサードユニフォームがめっちゃかっこいいことを言っておきたい。3rdなのであまり見る機会はないかもしれないけど、このミリタリー感あるグリーンのデザインが個人的にめちゃくちゃ良くてプレシーズンマッチでも好評を得ていた。
ザクっぽい色合いというか笑
ちなみに緑のユニフォーム好きとしては昨シーズンのビルバオのアウェーキットが本当にお気に入りだった。
今季はシュツットガルトのザク型ユニが本当にかっこいいので、ユニフォーム目的で見るのも面白いかもしれない。
サッカーはわりと日本でも世界でも名字がかぶることが多いのだが、先代の遠藤に敬意を払いつつ時代は「新遠藤」という親父超え(?)みたいなことを期待せずにはいられない。