日本代表が3位決定戦に行って良かった点もあると思う。
残念な結果ではあるものの、先日の準決勝の結果は納得がいくものだ。悔しくて寝込みつつもポジティブにいろいろ考えてみた。
1.決勝がブラジル対スペインという超豪華な組み合わせ
世界的な東京五輪の成功や注目を考えたとき、この決勝になったことは興行という面では良かったかもしれない。
夏季五輪でもっとも注目を集めるのが陸上100m走とサッカー男子決勝だ。
コロナ禍ということもあり順調には進まなかったTOKYO2020だが、終わりよければ全てよし、クライマックスのサッカー男子決勝でこのカードは間違いなく注目を集める。
もちろん日本が決勝でブラジルと対戦というキャプテン翼のような展開を見たい、それは偽らざる思いだ。
ただ東京五輪というイベントのとりとして、スペイン対ブラジルという最高のカードは注目度が段違いだ。男子サッカーの決勝だけ見るという人も世界には大勢いる。外国人からすると、五輪やってることすら実感ないという人々もいるわけで、この状況で開催できた日本を見てもらおうというアピールにもなり得る。
苦労して開催したからには、見てもらいたいものだろう。
2.スペイン人にいい印象を与えられた。
吉田のスライディングは間違いなくPKではなかったのだが、そのちょっと後ぐらいに一瞬酒井が触っているようにも見えるシーンがあったが、VARがなく普通に進行した。
もし日本が勝っていたら、スペイン人からめちゃくちゃ言われていた可能性もある。スペイン人は今も日韓ワールドカップの韓国戦の判定を覚えていて、誤審の代名詞になっている。
アジアと対戦するとこういうことがあるんだ、と思われていたかもしれない。そう考えると、接戦で日本は素晴らしい難的だったと思われる方が長期的には印象も良いのではないか。
海外サッカーの世界ではまだアジア人選手のイメージはバイアスがかかっているが、日本人は素晴らしくファイトする選手が多いと思われれがラ・リーガに移籍もしやすくなる。そして現地でも愛されやすくなる。
スペインは1年の視聴率ランキングが上位全てサッカーだった年もあるぐらい、サッカーに熱狂的な国なので間違いなくこの試合を見ている。もしかしたら日本での視聴率より高いかもしれない。
日本人からして難敵だがなんとか勝って、試合後も紳士的だったニュージーランドは好感だったように、スペイン人は日本に対して同じことを思っただろう。
3.メキシコと決着をつけられる
まず3位決定戦がまだあるというのが喜ばしいことで、あと一試合見られる。
ワールドカップ3位決定戦は余興(お互いリラックスして勝つための戦術に徹しないので内容は結構面白いことが多い)にすぎないが、五輪は明確にメダルが授与されるので意味合いが大きい。CLだと3位決定すらない。
直接対決の競技の場合、銀メダルは負けて貰うが、銅は勝ってもらうので銅の選手のほうが喜んでいるなんてことまである。まぁサッカーの場合、銀でも十分嬉しいし日本の場合釜本超えという意味もあるけれども。
言ってみれば主人公対ライバルやラスボス前の、準主役級の強キャラ同士が最終回ちょっと前に戦うような展開だ。
日本VSメキシコはそうした前座として面白い組合せだ。卑屈になるわけではないが、決勝に行って世界の期待を裏切るよりは3位決定戦で面白い試合をした方が今の日本の立場としてはちょうどいい。
もちろん決勝に行けばレアル・マドリードVS鹿島アントラーズのような最高の試合だったはずなので惜しいけども、メキシコ今の日本にとっては近いライバルだ。
伝統的に上位互換であるメキシコに対して日本はコンプレックスや苦手意識を持っていた。毎度勝てそうで勝てないのがメキシコだった。
すでに勝っているもののどうしてもグループリーグというケチがついてしまうので、ここではっきりもう一度決勝トーナメントで見てみたい。
本当に日本はメキシコに追いつけたのか、メキシココンプ持ちの日本サッカーファンとしてはまだ疑心暗鬼で、正直もう対戦してほしくないと思っていたのだが、決まったからには決着をつけるところを見ようじゃないかと。
スペイン、ブラジルを超えるにはまだ早いがここでメキシコを超えたという自信を日本サッカーがつけるときが来たのではないか。
2連勝したら本物だ。軍役免除のかかる韓国に6点入れた攻撃力こそメキシコの実力だ。
スペインにはどうしても「無理してPK戦で勝った」という印象になっていて、真の自信にはならなかったかもしれない。
ここでメキシコにはっきり勝てば、追いついたという実感が得られる。
しかもロンドン五輪の時に銅メダルを逃したというプレッシャーがある状況、そのトラウマとメキシコというコンプを同時に超えたら喜びとしては同じぐらい格別だ。
サッカーファンとしてはなんとかPKにもつれ込んでスペインに勝つというのも嬉しいけど、この状況でメキシコに勝つ方が意味合いが大きいように思うわけだ。
しかもメキシコは準決勝こそブラジルと延長戦PKまで行ったが準々決勝韓国戦では90分で解消している。
一方日本は2試合連続延長だったので、体力的には不利。また3位決定戦という同じ状況で苦手なメキシコ相手に負けて、釜本以降メダルが取れないというジンクスが発動するのではないかというあらゆるアウェー状況
ここで勝つ方が逆に凄いし、勝てたら日本の成長を感じられる。
ブラジルに引き分けた今のメキシコにストレート勝ちできれば、実質ブラジルにも勝てたかもしれない(五輪では既にアトランタで勝っているが)という理論も可能というおまけつき。
そう考えると、かなり意味の大きい見ごたえのある組合せになったとも言える。
3位決定戦でメキシコというのも因縁だ、ちなみに釜本の時も相手がメキシコだったといういわくつき
正直、スペインは負ける確率が高かったしスタッツや内容では圧倒された負けで納得がいくし、"まだ次がある敗戦"だったのでそこまで落胆はない。
「負ければメダル無し終わる」という後がない3位決定戦でメキシコ破れたときのほうがよほど落胆は大きく、文字通り絶対に負けられない戦いだ。
ワールドカップではそうでもないが、五輪ではベスト4など素晴らしいことではなく、3位と4位で天と地の差がある。
ここで勝てるかが日本サッカーに勝者のメンタリティが備わるかどうかの分岐点だ。
4.そもそも来年ワールドカップがある。
まず、今回絶対金を取らなければ数十年はチャンスがない野球と異なり、サッカーは五輪競技から無くなることはないのでまだ決勝進出のチャンスはいくらでもある。ワールドカップ程、決勝進出の難易度が高いわけでもない。
野球はパリ五輪では廃止の上に、よりによって韓国が取ってるのになぜか野球強豪国の日本が取り切れなかったタイトルだ。本当に後がない。
そう考えると、サッカーはまだ恵まれていて、また3年後挑戦と思えるわけだ。
それにここで成長した選手たちがA代表に入って、来年のワールドカップ目指すという続編もあるので寂しくはない。むしろ本番はここからだ。
オーバーエイジや既にA代表に定着している選手たちにとって大一番での敗戦はいい経験になっただろうし、この悔しさで若手選手がギラギラしだしてワールドカップに燃えてくれるのであればいいことづくめ。
通常の日程では五輪の翌年がワールドカップということはないのだは、今回は特殊で五輪の情熱が翌年に持ち越されるという珍しい事態だ。
今までであれば五輪の熱が冷めて、もう2年前のことかという過去形になるのだが今年は1年後である。正確には冬開催なので一年半後だが、去年はオリンピックだったと思いながら見れるワールドカップは初めてだ。自国開催ということもあり人選も本気だったので、物語としての繋がりもある。
ワールドカップがより楽しみになったと思えば、スペイン戦の落胆も少しは軽くなる。
日本スポーツ史上においてこれほどまでに重要な3位決定戦は後にも先にもあるだろうか。
よりにもよって、ただメダルを競う相手ではない以上に様々な因縁や意味合いが交錯する一戦だ。
今こそ勝つとき
頼む
どうかサッカーの神様、日本にメダルを取らさせてください