自分はガノタの友人とよくガンダム論を交わすことがある。ガンダムはどうすればいいのかとかあのガンダムのあのシーンは良いとかよく話すが、ともに一致する見解がある。
それはもはやガンダムは拡大や新規層獲得を目指すのではなくとにかく既存層向けにシフトしたほうが良いという事。
無理に子供向けにガンダムを作りまくった結果オワコンになりかけている。AGE以降パッとしないのがまさに子供向けにやりすぎたことであり、逆に唯一パッとしてるのはUCという既存層向けの作品だ。更にビルフドファイターズ一期も実際には子供はほとんど見ておらず見ていたのは自分の好きなモビルスーツが再登場するからという既存ファンがほとんどだった。
もう今の時代娯楽やアニメが多すぎてガンダムが新規にやったところで見向きもされないのである。更に今のアニメファンはもはや文化が違う。戦争やロボットに対しての耐性がないしキャラが退場することへの耐性がない。
日常系アニメで育った人たちにとってガンダムはもはや受け入れられない異文化でしかないし旧来の価値観でしかないのだ。そんな層にはどれだけガンダムをアピールしても意味がないし、そんな層向けにガンダムを作っても既存層にとって今度は面白くない。
今のアニメファンにとって戦争をすることもキャラが退場することも、難しい内容をやることも全て受け入れられない要素であり、アニメの目的が変わった。壮大な世界を描くことよりも「現実にはないけど現実にありそう範囲内での理想世界を満たす」ということが目的のコンテンツでしかない。
もはや壮大な何かや難しい事、戦争や戦いを描くことは意識高い行為でありガンダムは意識高い小難しい作品なのである。
もっとはっきり言えば今のアニメはアイドルの代用品でしかない。今のアニメファンはアイドルの代用品をアニメに求めているわけであって、わざわざ戦争を見ても疲れるだけだから見たくないのである。
もはや文化が違うのだ。
そのためにもうそういう新規獲得をガンダムはやめた方が良い。獲得することはできないし獲得する必要もない。
戦争作品を見たい人たちのために特化して本格的に戦争を描いた方が良い。
戦争がわからない層にわざわざ戦争を手ほどきしても意味がないし、戦争作品と見せかけてやってることは日常アニメみたいなことをしたら既存層にとっては面白くない。ラフタショックで離れるようなファンみたいなものを増やしてもどうしようもないのである。
もはや徹底的に保守化する路線がガンダムにとっては良い未来だ。
そもそも国で例えてもいつまでも高度経済成長の続く新興国はない。
どこかで内需を拡大させ安定させる段階にシフトしなければならない。ガンダムはいわばその発達段階、新興国としての建設段階を終えいわば先進国の段階に差し掛かった。新規層は夢のような存在ではない。いつまでも幻想を抱いて新規層を追い求める必要はないのだ。それよりは既存層を安定させることが重要である。中国も以前に比べその経済成長の勢いはなくなり輸出は鈍化しているがそれはどの国にも訪れる。そして内需を安定させる段階に移行しようとしている。中国は今内陸部の内需の拡大にシフトしようとしている。
それと同じでガンダム経済というのももはや無理に永遠に拡大し続けていくだけの段階ではなくなったのだ。それよりもこれからは既存層を安定させる段階に入る必要がある。
そのためにはもっと既存層を重視した作品作りが大事だ。
既存層に響く作品を作る必要があり、既存層をよりコアな層にさせることが重要だ。
その友人がガンダムUCを見たときに「くぅ~既存層にガンガン響くぜ!たまらねぇ!」というようなことを言っていたがそういうのが大事なのだ。それでいいんですよ、部外者はわからなくて。内輪で盛り上がる大切さ、オタク向けで結構。それでいいのだ。
昔みたいに公式サイドからの供給が少ない時代ではない、ライバルコンテンツが多い。そういう時代にはがっちり既存層を確保するのが一番なのだ。
富野由悠季はGレコを作る前「未来に種をまく、ガンダムファンに見てもらおうと思ってない。子供たちに見せたい」と言っていたが子供たちにはそっぽ向かれ結局見ていたのはコアな富野信者の既存層だけ。
日本が急に少子化が解決しないようにガンダムももう子供が急に増えていく時代でもないのだ。
そもそも今の時代本当の意味で新規コンテンツの方が少ない。ポケモンですら20周年だし、ジャニーズなんて1960年代から続いている。シャルル・ド・ゴールやビートルズがいた時代から既存層をがっちり確保して今も続いている。それで成功しているのだ。歴史が長く続いて既存層ばかりのコンテンツであることは恥ではないのだ。
スポーツでも昔からのファンを抱えているチームは今も人気があり強い、むしろ歴史があることは誇りなのだ。
ガンダムファンはどこか長寿コンテンツであることに引け目を感じて最新コンテンツでないことを嘆いている節がある。しかしむしろその歴史の長さは誇りだ。
ジャニーズだってがっつり既存層を確保しているわけであって既存層ビジネスをやっているのだ。それでむしろ若い層のファンも現在進行形で増えている。コンテンツにとって既存層を安定させることは有効な手段であり安定させることでむしろ新規ファンも入ってくる。下手に新規ファンを確保するために媚びて開放的になるより「その身内に入ると楽しそう」というような雰囲気が大事。そういう意味で先輩のジャニーズにガンダムは見習うべき。ジャニーズ、最新コンテンツのように見えてガンダムの10年先輩ですよ。だけど最新のイメージを保ててやれてる。
そういう部分をガンダムはもしかしたら見習うべきなのかもしれない。
ジャニーズは「いかにもジャニーズらしいトンチキ感」みたいなものを今でも継続してる。いわばガンダムにおける富野由悠季独特の世界観のような感じでジャニー喜多川の独特な世界観が現役で続いてる。ジャニーズ的トンチキ感=富野節、ガンダム的世界観。ジャニーさんやジャニーズが今も現役バリバリなのをみれば富野やガンダムはまだまだやれる。富野にはジャニーズ事務所のあの元気なお爺ちゃんを見習えと言いたいし、ガノタやガンダムオタクも歴史が長いことを恥じるべきじゃない。
むしろ歴史と品格を大事にして既存層のためにやることの方がかえって新規層にとっても魅力あるコンテンツになる。既存層が諦めた雰囲気を出して「俺ら古いよな」という雰囲気になっていると、それはダサいコンテンツになってしまう。
そもそもガンダムはよく考えると他の有象無象のロボットコンテンツに比べれば滅茶苦茶恵まれてる。ガンプラも毎回発売されるし、ゲームやアニメも毎年発表される。アニメも一応リアルタイムで新作が放送されてる。
今の作品に飽きたところで昔の物が膨大にある。
いざという時は昔の物をリメイクしたり、外伝を作るという切り札がある。
こんな恵まれたロボットアニメは他にない。
たとえばUCが人気ならばガンダムSEEDにおけるUCみたいなものを作ることができる。宇宙世紀を開発しすぎてもはや年表に空きスペースがないならば今度はコズミック・イラを開拓しまくればいい。いくらでも資源がある。我が軍はまだ資源が豊富にある。これまでの貯金があるのだ。
ガクトや及川ミッチー、TMR西川さん、そういうファンが今も数多くいるしブランドがある。その誇りを失ってはいけない。
そういう意味でがっつり大人向けに作ったほうがもしかしたらいいのかもしれない。
子供にわからせる気ゼロの作品を作るべき。ある程度の社会的な教養や軍事の素養、国際情勢への認識、人生哲学がある人間向けに作る。本当に大人向けのアニメは意外と無かったりするし、最近ネットの広告を見ても「30代~50代がはまるゲーム!」みたいなものが多い。今のコンテンツの主力層は実は若者ではない。若者は正直お金も持ってないし金払いが悪いし購買意欲もないしそもそも金銭的余裕がないのである。
それよりはお金を持っている30代以上の層に向けて作る方がコンテンツとしても利益を上げられる。スマホのアプリとかでも「3,40代ならハマる戦艦ゲーム!」みたいな広告で昔のゲームっぽい作りでその世代に向けた広告が多い。
ガンダムもいっそのことそういうビジネスモデルにした方が良い。
そしてそれは今のアニメに満足しない若者層向けにもなる。
20代でも今の日常系アニメや、ラノベ原作の俺つえええアニメに嫌気がさしている人はめちゃくちゃいるわけでそういう人たちを取り込むことだってできる。体力のある30代以降の世代に加え、今の日常にアニメに懐疑的な10代20代を取り込めばかなりの戦力になる。
自分自身今の日常系アニメはまるで見る気がしないし、最近のガンダムのように無理に新規層拡大を目指して面白くない作品にも興味がない。むしろがっつり既存層向け、大人向けに作ったガンダムの方が見たい。ガクトや及川みっちーさんのような人が絶賛するようなガンダムの方がよっぽど見たい。
1話を量産機の生産についての会議で終わるぐらいのガチ感あるガンダムを見たい。
軍拡を求める軍上層部や軍産複合体関係者「この機体を量産してほしい」
政治家「しかし民意が・・・」
ライバル企業「こちらのモビルスーツならより安く製造できます」
こういう内部の利権争いから始まり、製造に移され、戦闘シーン一切なくその内部の工場で生産するシーンや会議するだけのシーンで1話が終わる、それくらいのガチ感ある作品を見たい。ガンダムSEEDならディンとかバクゥを地球侵攻用にプラントで実験してる製造前の段階のシーンを見たいんだよなぁ。連合やオーブのビームライフル開発にかける技術者たちの葛藤や奮闘を見たんだよなぁ。モルゲンレーテやアナハイム・エレクトロニクスの内部をもっと見たい。
初代ガンダムならばヅダやギャンとかマニアックな機体を正式採用させようと頑張る開発者たちの姿と結局採用されないで落胆する姿とか見たいんだよなぁ。
あとは第二次世界大戦でグデーリアンらが電撃戦を開発したように、初期のモビルスーツ戦術の開発のためにかかわった将校の努力とかもみたい。その世界における軍事理論の確立やモビルスーツの有効性が確立されていく過程みたいなものが見たいんだよなぁ。そういうところを作りこむべき。そうやって大正義感ある戦争をやるのを真のガンダムオタクは見たがってる。そういう工場とかが容赦なく敵軍に爆撃されるシーンも見たい。それぐらいの過激なことをやったほうが既存層にガンガンひびいてくるんだよ。
こっちはザクやグフの製造工程をひたすら見たい、ラフタショックでビビるファンは最初から切り離してOK。「モビルスーツ戦いらない、戦争いらない」とか言ってるキャラ目的の奴は最初からけものフレンズでも見とけっていうスタンスでやったほうがかえって今の時代ブランドを確立できる。
それぐらい容赦ないことをやるのが見たいわけでガンダムに普通のことは求めてない。ガンダムSEEDとか今見たら都市吹っ飛んでるし、大量に量産機が一瞬で蒸発してるしいろいろとめちゃくちゃ。でもこういう大規模感ある戦争を見たいんだよ。
ガンダムファン「もっと真面目に本気で戦争やれ!生ぬるい戦争してんじゃねぇぞ!」
ガノタってこれくらい危ない奴らなんですよ、マジで。
コロニー落としとか核とかニュートロンジャマーで数十億人犠牲者が出ましたとかそういうのが見たいんだよ。初代にしてもSEEDにしてもそもそもそれが話が始まる1話以前の前提というのがヤバイ。地球の人口が半分減ったとかサラッと始まりに言うのがガンダムクオリティ。
そういう大きな戦争がすでに起きていて主人公の話はその中の1つの物語に過ぎない、これがガンダム。そして作品が始まれば軍の主力基地を大量破壊兵器で蒸発させて味方を犠牲にして敵軍の主力部隊を一掃するのがガンダムクオリティ。
俺らは日常ではなくこれくらいの非日常を見たい。
日常アニメへのアンチテーゼとして究極の非日常アニメ、それがガンダム。
日常アニメをぶっ壊す、日常アニメの時代を終わらす、それくらいの覚悟を持って過激に再スタートするガンダムを自分は見たい。
日常アニメ飽食の時代に非日常アニメとしてガンダムは再び求められる時代が来るのではないだろうか。
ガンダムに求められることはその非日常性である。