よくガンダムの子供人気の低下や子供のロボット離れのようなものが議論されることがある。もう最近の子供はガンダムを見ないしガンダムはオワコンなのではないか、モンスターやカード、それどころかソシャゲにいってしまってもう誰もガンダムに興味がないという言い方をされる。
そもそも自分もそう思っている派であり、もう皆ガンダムに興味ないんだろうなという事も感じる。ガノタとしては残念な部分もあるけど時代じゃないんだろうなという思いはある。今日日子供にとってはでかい事はかっこいいことじゃなくそれがロボットに興味を持たない遠因にもなってるし、女性ファンもロボット物はキャラクターの顔が見れないからという理由で避ける傾向にある。
更に最近のアニメオタクですら戦争をしたり戦ったりする作品という者は重い物であり、考えて見る事が出来なくなってる、または考えて見ることが疲れるようになってきてる。
昔のオタクはもっとアニメに全力で傍から見ればどうでもいいものに熱くなり考察していた。
そしてその昔のオタク文化を持っている世代が今の30代以上になる。ガンダムSEEDを見ていた世代ですら30代に突入している人は多いし、ガンダムの盛り上がりを知ってる世代というのは徐々に高齢化してきている。
そのためコンテンツの若返りを図ろうとしているのが昨今のガンダムでありガンダムファンも子供ファンの少なさを嘆いていたりする。なんとかして子供に興味を持ってもらおうと今のガンダム界は努力している、そしてその努力は現状報われているとは言い難い。
富野由悠季が未来に種をまくと宣言し子供たち向けに作る、ガンダムオタクのためには作らないと言った物の結局子供にはそっぽ向かれてしまいBFシリーズも実際に見ていたのは既存ガノタが大半だった。そして最近ではもう今後ガンダムは既存層向けに舵を切ってコンテンツとしてできる限り延命するという、拡大路線とは対極にある段階に差し掛かろうとしている。
そういうガンダムの大正義感はもはやなくなり細々と楽しむ閉じコンになってきているしいずれオワコンになる現実はある。どれだけ延命できるかという勝負だ。
しかし自分はこれでいいと思ってもいる。
仮に子供向けに作ろうとしたら、今の子供向けだとかなりつまらないものになることは間違いない。妖怪ウォッチで育ち、ユーチューバーを見て楽しんでいる子供向けに作ったものが面白いものになるだろうか?しかも彼らはロボット物や戦争物を楽しむ感性がない。むしろ彼向けに作ればもはやガンダムがガンダムであること、モビルスーツ戦や戦争を行う事が必要なくなってしまう。
逆に30代40代のガンダムファンといえばGACKTや及川光博、稲垣吾郎など芸能界にも錚々たるメンバーが揃う。10年ほど前はガンダムはもっと高度というかブランドのあるものとして見ている人は凄いというイメージがあった。同時に非常にコアでこれぞオタクという人も多かった。オタク文化全盛期の時代である。今のオタクはオタクっぽくなくなりファッションオタクやにわかオタクのようになった。
よくもわるくもネットがメジャーになりアニメ文化が敷居の低い物になっていった。その結果何かを考えて見るタイプや考察をしなきゃ気が済まないようなオタク気質な人は少なくなりネットの雰囲気も全体的に一般化して、ネットがネットらしいというような時代ではなくなった。
その時代にネットの中核だったのがまさに今の30代、40代である。
自分はその時代のネットをわずかながらに知っているが、その時代の方がネットやオタク文化はワクワクしたし本当にヤバイ奴らがいる感があった。
ガンダムを見ている女性ファンもガンダムSEED、ギリガンダム00ぐらいまではコアな腐女子がいたし一流の腐女子ならガンダムを見ているべきという風潮もあった。
それが今の腐女子はもう温室育ちのにわか腐女子になり公式がわざわざ腐女子向けに作ったものにしか集まらなくなっていった。腐女子の妄想力は明らかに落ちた。腐女子向けに与えられたものに集まってコミュニティを形成したいだけであり本気でアニメキャラクターが好きというよりも、そのアニメキャラクターに萌えてる自分が好きというファンが多い。
昔の腐女子はガチでヤバイやつら感があったが今の腐女子はただツイッターでワイワイしてチヤホヤされたいファッション腐女子に過ぎない。今の時代ジャニオタのほうがよっぽどガチ感があり、腐女子は完全ににわかの巣窟と化している。おそ松のようなものに集まりイケボ声優の演じるキャラがワイワイしてるのを楽しみたいだけなのだ。
オタクの質も腐女子の質も変わった。子供の質も変わった。
ユーチューバーを見て楽しむレベルの知性しかない子供や、腐女子向けに作られたアニメしか語れない女性ファン、そして戦争物も楽しめない、考察もできない今のアニメファン、こんな層向けに作ったガンダムが本当に面白いだろうか?
逆にガンダムSEEDの全盛期を体験した世代や、初代ガンダムブームを体験した世代、ロボットや未来、SFに憧れていた世代向けに作った作品はかなり面白いに違いない。
ユーチューバーで楽しむ妖怪キッズ向けに作ったガンダムより、GACKTや及川みっちー、稲垣メンバーが楽しめるようなガンダムのほうが100倍面白いはずだ。
そもそも今の10代20代も、最近のオタク文化に染まった人ばかりではない。最近のオタク文化に嫌気がさしている10代20代は目立たないが一定多数存在する。誰もがユーチューバーが好きなわけではないし、ラノベ原作の俺つえええ小説や頭空っぽで見れる日常系アニメが好きなわけではない。
むしろそういうのが好きだった世代が年齢を重ねて今硬派な作品、難しい内容の作品を求め出している。自分自身が何よりそう言った存在なのだ。今では日常系アニメを叩いているが、数年前までは日常系アニメをよく見ていたし女キャラしか出てこない作品を絶賛していたりしていた。しかし人間いつまでも同じような趣味でいることはない。当時らき☆すたやけいおん!を絶賛していた人もその後の日常系アニメ乱造の時代に飽き飽きし嫌気がさしアニメファンでなくなっている時代になったり逆にコアオタ向けの作品を絶賛するようになっている。今の中高生もその内成長して人生観を身につけるとそういうアニメには嫌気がさすようになる。
そもそもファンの高齢化ということをマイナスに取られることにも自分は問題があるように思う。30代40代は収入も多く社会の中心としてこれからバリバリやっていく年齢であり、50代60代も長生きするし老後に向けてお金と時間を使えるようになっていく。
一方子供や10代20代はあまりお金も使えず人口自体も少ない。
更に年齢を重ねるという事は人生観や人生哲学を醸成するという事でもある。若いころより物事を考えるようになり成熟する。視聴者としてはユーチューバーに馬鹿笑いしたり、頭空っぽの日常アニメに癒しを求めるだけのファンよりよっぽど成熟している。
若い人向けに作ることは必ずしも良い作品を生み出すわけではない。
逆に中年層以上の人向けに作るという事は収入も哲学や思想も成熟した層向けに作るという事でもある。更に言えばこれから人口が一番多い年代にもなる。また親の年齢にもなっているのでそこから子供に趣味が波及する可能性も考えられる。
むしろガンダムはそういう層向けに作り「大人向けアニメ」としての地位を築くべきだ。人口が多く収入も多い世代、そして考えてアニメを見る習慣や能力のある世代向けに作ったほうが良い物が作れる。今後大人向けアニメはスタンダードになっていくかもしれない。「ガンダムは大人が見る物」でありむしろ子供は見るなぐらいのものにしてもいいかもしれない。いっそのことR18作品にしてヤバイ危険な作品というブランドを築くのもありだ。
実はアニメにおいて大人向け作品は意外と探すのが難しい。どれも子供や学生が視聴者のメイン層になることを考えていて丁度大人が見て楽しめる物はない。だけど潜在的な需要はある。むしろガンダムはそういう層に向けて作るべきなのではないだろうか。
これからの時代ネットの主役は若者ではない。実は中年層が一番多くて中核である。真の主役となる年代向けに作った方が良いし、若者は主役ではない。ガンダム風に言えば「時代を作るのは若者ではない」という時代なのだ。社会の構造の問題としてもはや若者が多くない時代になった。その時主役になるのは皮肉なことに「時代を作るのは老人ではない」と批判された老人であり、そときに若者だった今の中年世代でもある。
ガンダムと共に成長していく世代が時代を作っていくのだ。
さらに若者向けに作らないという事は、若者視聴者層を切り離すことを意味しない。10代20代でも現状のオタク文化に嫌気がさしている層を取り込むことができるし、そういう10代20代はいくらでもいる。自分自身その1人であり「ユーチューバーで笑う妖怪キッズ向けに作ったガンダム」と「GACKTや及川みっちー向けに作ったガンダム」ならば圧倒的に後者が見たい。
若い人が若い物を見たいといったらそうじゃなくて、背伸びをして大人向けの難しい物を見たい人も多くいる。「わからないながらも何か難しいものを見ている楽しさ」というのがガンダムにはある。意味も分からない哲学書を学生時代に読むような感覚で、ガンダムは一定水準の知性がある30代以上向けに作った難しい作品というポジションを築くべきなのかもしれない。難しい哲学書のアニメ版、それがガンダムに求められる次世代の役割だ。
例えば自分はカントの哲学書を背伸びして高校時代に読んだことがある。正直よくわからなかったけど、読んで少し賢くなった気がした。自分の知性水準以上のものを成長のために求めるファンは多い。更にカントの文章はわかりやすく書くことや読者のレベルに合わせて書くことを一切していない。ガンダムというのはそれでいい、思う存分難しく書いても問題ないし難しく書けば考察する人も出てくる。30代以上にはアニメを見て考察したがるオタク気質の人も多い。カントのように難しく書く、理解できない人は見なくていい、それぐらいの内容であってもいいのかもしれない。
これまでガンダムはどうにか見てもらう見てもらおうとレベルを下げるアプローチばかり続けてきた。しかしそれをやっても元々難しい物というイメージがあるのでなかなか見てもらえないし、そもそも今の若者世代にはロボットや戦争というものへの興味がなくそれだけで視聴意欲を遮断してしまう。
ここで逆転の発想として難しいイメージがあるならば大人向けイメージがあるならばその方面をもっと強化する、それを魅力に変えるという発想が必要になる。
見ている人はある程度人生経験を積んだ30代以上で、これをわざわざ見てる10代20代も馬鹿ではなく知性がある層や知的欲求がある層だと想定してわかりやすいものは作らない、それぐらいの発想の方がむしろ面白く作れる。
高齢化ファン向けに作るという考えだからマイナスに感じる。
ポジティブに言い換えれば人生哲学が成熟したファン向けに作るという事もできる。
今後ガンダムというのはそうした発想の変化が求められる時代に差し掛かったのではないだろうか。無理に若返らせようとしてかえって若者も見なくなる、今はそういう悪循環であるように思える。ブランドを復活させるためにはむしろ振り切って難しくした方が今後の為であるように思えるし、今そういうアニメが減ってきた時代からガンダムがその基調になってきた役割を担うべきではないのだろうか。そしてそこにはきっと大きな需要があるはずだ。