サッカーとは90分間運動し続けなければならないスポーツであり非常にハードだ。現代サッカーでは選手の走行距離はますます重要視されバルデラマが試合中の走行距離8kmぐらいだったというのは遠い昔である。
今やサッカーのアスリート化が進み8kmしか走らない中盤の選手に居場所はない。
どのクラブも当たり前のように高い運動量を求め皆馬車馬のように走る時代である。天才リオネル・メッシでさえ不調の時はすぐに運動量不足を批判される。
猫も杓子も運動量の時代になった。
1人で2人分の動きをすると評される選手は圧倒的な運動量やスタミナを武器にしていることが多い。
しかしこういったフィジカル面の体力と同時にもう一つ必要な体力がある。
それはメンタル面や頭脳面の体力でもある。
現代サッカーはより複雑なポジショニングやプレッシングが求められどの場所に位置取りをするかどのタイミングで走り出すかといったことが複雑に求められる。戦術家の監督の下ではそれらはより厳しく求められサンパオリ、クロップ、シメオネそういった監督たちはオフザボールの動き、ボールを持っていない時の動きを厳しく要求する。
そもそもサッカーというのは90分あれば実際にボールを持っている時間は5分にも満たない。80数分はボールを持たずに走っているスポーツだ。
その80数分の質で勝負しなければならない。
その時にまさに必要なのが頭脳面の体力、メンタル面の体力になる。
徹底的に頭をフル回転させ90分間動き続ける。
ただ単に走って動くだけではなく同時に頭も動かしていなければならない。戦術通りにしっかり動かなければならないし、戦術の枠を飛び越える創造性やひらめきもその上で求められる。
そういう現代サッカーのトレンドを考えたときに今後少年サッカーやユース年代等の育成で頭脳面の体力ということも重視されていかなければならないのではないか。
よく少年サッカーで「足の遅い子はどうすればいいか」という問題がある。
足が遅いならそれ以外を補うことが大事だ。
例えば速く走れないならその代りたくさん走ればいい。一回の速さではなく試合中に走った総合量で勝負する選手を目指すのもいい。その運動量に加え賢く的確な場所に走れば単に足が速い以上に武器になる。
またサッカーというのはフライングが許されるスポーツでもある。
足のは速い選手より、早くスタートすれば勝つことができる。このシンプルな事実を上手く利用する選手が有利になる。100mのタイムでは遅いかもしれないけど5m走や10走といった加速力では負けないという選手には勝機がある。
そしてそれを支えるのが判断力だ。
90分間頭をフル回転させながら走るタイミングや方向を常に計算する。これが現代サッカーで単なる速さやフィジカル能力よりも求められる。徹底的に90分間思考する脳のエネルギーは誰にでも備わっている強みではない。この部分を少年サッカー年代の内から鍛えれば大きなストロングポイントになる。
90分間考え続ける頭脳面の体力、そして90分間走り続けるフィジカル面の体力、この2つが現代サッカーでは強く求められている。
今後サッカーの育成面においてはこの2つがより注目されていく必要があるし、同時にこの部分は日本人選手の大きな武器にもなる。常に集中し続けることはラテン選手の気分や気質にはない武器だし、走力や運動量というのはアジア人選手の武器になる。
日本サッカーの育成という意味でもこの2つの体力は必要になる。
体力には頭脳面とフィジカル面の2種類が存在する。考え続ける事、走り続ける事。この2つが日本人選手が世界で戦っていくうえで必要な能力であり、日本人に向いている要素でもある。
かつてイビチャ・オシムは「考えて走るサッカー」を日本代表の長所に育て上げようとした。今その考えて走るという事が世界のサッカーの最先端トレンドになっていることは偶然ではない。