EA FIFAシリーズを将来的なEスポーツのコンテンツにするにあたって考えるべきことは何なのか。本当にゲームのサッカーをみて盛り上がる観客を創出することができるのか?
そのことについて考察していきたいと思う。
日本ではまだ黎明期、草創期に過ぎないFIFAシリーズ
日本ではマニアックなゲームというのが前提でありまだメジャーな環境は整備されていない。
そもそもFIFAの前に流行ったウイニングイレブンがあって一時はリア充がワイワイみんなで集まってやるパーティゲームとしての地位を気づいていたが、最近はウイイレやそもそもコンシューマーゲーム機が人気を無くし、残ったサッカーゲームファンの間でFIFAがシェアを伸ばしたというのが現状だ。
FIFAが勢力を伸ばしたというよりもサッカーゲームやスポーツゲーム自体ウイイレ全盛期に比べて落ち込み、その残ったコアなファンの中ではかつてよりFIFAが支持を得ているという事に過ぎない
しかしながら「ゲームはやる物」から「ゲームは見る物」へと変容していく現代のコンテキストのなかで語る時に必ずしもプレー人口が減ってること自体はそもそも問題ではない。
なぜならばFIFAというゲームをゲーム動画として世の中に広めていく時に必ずしも現役プレーヤーやコアなサッカーファンだけが想定される視聴者層ではないからだ。
むしろこの場合考えるべきなのは普段サッカーを見ない人やFIFAやウイイレをするゲーム環境をそろえてない人を視聴者層として想定する必要があるということになる。
・毎週末テレビやスタジアムでサッカーを観戦する習慣がある層
・家庭用ゲーム機やゲーミングPCをそろえてサッカーゲームをしている層
はっきり言ってこの2つの層は日本の全人口を考えたとき少数派である。
「サッカーを普段見てる人にゲームを動画を見てもらう」「普段サッカーゲームをしてる人にゲーム動画を見てもらう」というそもそもの発想が間違っているし、その需要には限界がある。需要があまりにも少なすぎるし、その分野においてはもっとクオリティの高い動画がいくらでも存在する為ゲームプレー動画では勝てない。
フルマッチ動画やハイライト動画、一流選手のタッチ集があるのにわざわざ素人のゲームプレー動画を見ようとは思わない。本物のサッカーを見てる人が「たかがゲーム」の試合を見ても正直言って面白くないのだ。更に同じFIFAゲーマーも見るよりやる方が楽しくそこまで大きな需要は見込めない。
むしろ「サッカーにはちょっと興味があるけど有料視聴環境をそろえるのは億劫だという層」や、「サッカーゲームをやりたいけどゲーム環境をそろえることができない層」にむけてコンテンツを打ち出していく必要がある。
日本人の全体を見たときに有料視聴環境をそろえて定期的に視聴してる人は何度も言うように少数派であり、そういう人はもう自分で独自にサッカーを見てる。
そしてFIFAやウイニングイレブンを家庭用ゲーム機をそろえてやってる人も少数派。ゲーミングPCやPS4のような高度なゲーム環境と家庭における自由時間、ゲームを気兼ねなくできる環境は万人が揃えられるものではない。むしろそろえていない人が大半。
それでもサッカーゲーム自体には興味あって「買えたらいつか買いたいけど今は買えないから動画で見よう」という人のほうがむしろ多い。
ゲーマーというのは自分の常識を世間の常識だと思いがちだけどPS4やゲーミングPCをそろえて家で優雅にゲームしてる人ってもう今の時代少数派。
だから揃えている環境にある人が簡単に見れる動画を作って見せようというのが昨今のゲーム投稿動画の基本的な考え方になっている。自分なんてゲーマーの世界ではたいしたことないけど、日本人全体で考えたときにそれって上位10%の環境だったりする。
そもそもゲームしない人も多いし、やったとしてもスマホゲームや携帯ゲーム機。お爺ちゃん御婆ちゃんから子供、そして女性も含めれば高度な環境でゲームをしてる人というのは圧倒的少数派。でもその90%にゲーム動画は見たいという層がいるかもしれない。
「10%の既存層に見せる」というよりも「90%の新規層に見せる」というアプローチをしていく必要がある。
女子サッカー選手ですらウイイレほとんどやったことが無いのが実態で、FIFAやってる女性ってもう1%にも満たない。だけど女性はゲーム動画を見る事自体は好きだったりする。やるよりは見たい派という潜在的需要は大きい。FIFAしないほうが大半も大半で、FIFAしない人向けにFIFA動画を作っていくのが大事
自分も最初はFIFA動画を投稿をしようしたことがあってひたすら同じFIFAゲーマーから恥ずかしいと思われないために練習してシーズンのトップ層になろうとして、DIvision1に行かないと駄目なのかなと思っていた。
ただそれが間違いで、そもそもそこまでハイレベルなゲーマーにとっての教材やお手本となる高度なプレーを求めてる人って人口で言えば滅茶苦茶少数派の中の少数派でマニアしかいない。
それよりはもっといろんな人に見てもらうためにわかりやすい見せ方が必要になる。
「ゲームにしかできないとんでもゴール集!」
「メッシ11人VSロナウド11人究極の戦い!」
「ガチ初心者にサッカーのルールをゲームで解説してみた」
「仮想ワールドカップ決勝 日本VSドイツ」
Division1のトップレベルの10分ハーフの試合をそのままあげても、それがいくらレベルが高くても再生数は絶対しょぼい。
だけどこういうわかりやすいタイトルで、とっつきやすい感じにすれば見る人は増える。レベル自体はトッププレーヤーの足元にも及ばないけど、そのレベルの差を理解できる人って視聴者の中ではマニアだけ。90%以上の人はその差に気付かない。
実際自分も普段全然やらない別ゲームではレベルの違いが判らない。FPSは全部同じに見えるし、ルールすらわからないゲームがある。面白いかどうかはレベルの高さではない。
サッカーではJリーグより海外サッカー、ワールドカップ、代表戦の方が人気だけど、野球ではメジャーリーグベースボールより圧倒的にプロ野球の方が人気。レベル以外の面白さを求めているからMLBの方がレベル高くても皆プロ野球を見る。その本質以外の面白さやマーケティングでプロ野球は成功している。
「興行として盛り上げるには必ずしもレベルの高さ一番大事ではない」という考え方が必要になってくる。正直言って見てもらった勝ちであるし、実際メッシ11人VSロナウド11人の動画はかなり再生数がある。
自分はその手の動画をくだらなくて見ようとも思わないけど、それで見る人は大勢いる。そんな真面目に皆本質を見ていなくてパッと見の面白さや適当感が今は時代のトレンドになってきてる。そして普段サッカーを見ない人や、いわゆるユーチューバーを楽しんでみてるキッズ層にとってはそれがリアルのサッカーより面白くて馬鹿笑いできたりする。全員メッシ対全員ロナウドとかすげえ!おもしろそう!っていう発想を持つキッズ層には受ける。ヒカキンも大部分の人間にとってはくだらないけど、そのくだらなさを楽しみにしてる人はいる。そういう馬鹿っぽさやわかりやすさが今求められてる。
そういう馬鹿っぽさやカジュアルさでこれからFIFAというコンテンツは勝負していかないといけない。真面目にハイクオリティなものとして勝負しても見向きもされない。
ガチのサッカーファンは普通にサッカー見るし、自分でFIFAをする。
本当にサッカーのルールがわからない人や、どう見たらいいのかわからない「サッカーの戦術って何?」「サッカーって何から見ればいいの?」「オフサイドわからない」「ベッカムってまだ現役なの?」「なんとかマールって選手いたよね」っていう人たちに向けてどれだけ上手く見せていくことができるか。
ガチゲーマー層を必ずしも視聴者層に想定しなくていいし、ガチゲーマー層はもっと別のゲームを見たがっていて固定ファンになってる。
日本のガチゲーム動画視聴者層はたいてい格闘ゲームかFPSになっている。
ただそもそもガチゲーム視聴者層自体が日本では少数派で、日本人の人口を考えたときにもっと広いフロンティアの可能性がある。
「昔ウイイレやってたけど最近やってないなぁ」という人も視聴者として想定できるし、サッカー自体はやってるけどゲームまでわざわざ買い揃えてする気にならないという人もファンになりうる。
目の肥えた格闘ゲームファンやFPSファンのいる市場に乗り込んでいても勝つ見込みはまずないしまず見向きもされない。既存のゲーム動画視聴者層はサッカーゲームの動画を見たいと思ってないし需要がない。
それよりももっと別の需要を想定する必要があるし、需要を創出するという考え方も必要になる。
あとはやはり誰がやっているかという事も大事になる。
前述の女子サッカー選手ですらほとんどサッカーゲーム経験がないというのは、当時ヤングなでしこの猶本光と柴田華絵がウイニングイレブンのプロモーション動画でやったのを見て知った。
女子にとってサッカーゲームって本当にやる物でもないだなと思ったし、女子サッカー選手ですらほとんど経験がないらしい。ただ自分はこの動画を見て結構面白かった。プレーのレベルは本当に初心者だけど女子がサッカーゲームしてる姿が新鮮で面白いは面白かった。この素人っぽさや、自分がやり始めの頃が懐かしくなった。
まさにレベルの高さは関係ない理論であって、こういうのが大事なのかなとも思った。
例えばJリーガーがyoutube動画投稿して、所属選手内でトーナメント大会開いたらそれは絶対そのクラブのファンにとって面白い。スポーツ選手がSNSやったりユーチューバーになったりするのは今の時代のトレンドで試合以外の面白さを盛り上げていく必要がある。
そのほかの例で言えばサッカーファンとして知られるNEWSの手越と増田がワイワイ家にいる感覚でサッカーゲーム対戦してる動画をあげたら間違いなく再生数は凄いことになる。番組内でやってもかなり話題になる。大半は手越が「うぃぃ」って言ってるだけどだけどファンにとってはそれが面白いし、自分もそれは滅茶苦茶見たい。そもそも手越はゲーマーであるしサッカーファンでもある。世代的にも間違いなくウイイレ世代だし、ジャニーズ内のインタビューを見てもサッカーゲームをしたという話は多い。
手越自身も「オンラインゲームでの対戦は熱くなるし楽しい」という風に雑誌の趣味のインタビューでも答えてる。まっすーも元々サッカー経験者。そして手越と増田のコンビは人気が高い。サッカーゲームやサッカー自体にはそこまで興味ないけど、その2人がゲームやってワイワイしてる姿を見たいって人は物凄くいると思うし自分もその1人。
またそもそもサッカーゲーム動画として投稿する必要がないとも考えられる。
例えば「サッカーラジオ」「サッカー討論」「サッカー議論」みたいな動画を上げるとする。自分が常日頃語っているサッカー論みたいなものを文章ではなく音声として録音して動画投稿をする。
ネットにも数多くサッカー論を書いている人がいる。
そういう人が動画サイトで音声としてサッカーを語れば更に聴いてもらえるかもしれないし議論が盛り上がるかもしれない。
しかしラジオって音声だけで映像的にはつまらない。
そういう時におまけ程度の考え方として聞いているときの暇つぶしにFIFAやウイイレのプレー動画でも見ながら聞いてもらうという事もできる。何気なくやった普通の試合でもないよりはまマシ。その動画をだらだら見ながらサッカー議論を聞ければ十分面白いし、なんだったら自分もいつかやってもいいレベル。
あくまでおまけでしかないから、そこまで面白い試合やレベルの高い試合は保証できないけど内よりはマシ程度の暇つぶしにはなるよという動画
しかもこれで見込めるのが「タイトルで見てくれる」という層
例えばいくら「サッカーゲーム」とか「FIFA」ということをタイトルにしてもすでに先行者が投稿していて埋もれてしまう。探してる人は人気動画を見つけてそっちを見てしまう。
そういう時に「日本がサッカー強豪国になるには?」「日本サッカー育成論」というようなタイトルにして本質はラジオだけど、おまけ程度に動画もあるよという感じにすればもしかしたらヒットして通常のゲーム動画よりも多く見てもらえるかもしれない。
これだけ供給過多の時代だからそういう工夫も必要だし、これまでのことをまとめるならばとにかくエンタメとしてどれだけワイワイ楽しそうな雰囲気にできるかが盛り上げる鍵になる。そしてこれまでの既存層とは違った別の層にどれだけアピールしていけるか。強引にまとめるならばそれらのことがFIFAシリーズやサッカーゲームの興行やコンテンツ、コミュニティとしての盛り上がりに必要な事なのではないだろうか。