ブラックスワンという愛称、そして名井南(みょうい みな)で知られるTWICEの日本人メンバー「ミナ」はその静かな美しさで人気を博しつつある。
特にミナの人気や魅力は日本のTWICEファン、ONCEには絶妙に響いていて今一番人気が出てきているメンバーの1人と言えるのがミナだ。
正直、日本人のファンがTWICEを見た時「この子一番日本人っぽいな」と感じるのは満場一致でミナなのではないだろうか。
むしろ韓国人のペン(=ファン)にはサナやモモが平均的な日本人像ではなく、「ミナみたいな子が普通の日本人っぽいよ」というぐらいにミナは日本人的な性格をしている。
韓国のガールズグループを見ていて思うのが皆テンション高くて元気だなという雰囲気なので、むしろTWICEではミナやツウィのような大人しい性格のメンバーのほうが珍しく見える。
そういった日本人的な大人しさに加えて、ミナは凄くお嬢様の家系育ちで上品な教養があるのもその独特な雰囲気の魅力になっている。お嬢様らしくバレエを幼少期に習っていた経験があり、それが一番の特技としてエレガントなダンスや歌唱パートを担当することが多いのが特徴だ。
ミナの「ブラックスワン」というニックネームも、バレエといえば白鳥が有名なので白鳥を意味する英語の"スワン"にかけられている。そいてブラックスワンというのは「黒い白鳥がいないことは永遠に証明できない」という哲学上のジレンマを比喩しており、そういうミステリアスな印象を例えている意味がある。
おしとやかでエレガントであり、教養があり歌声も美しく神秘的、そんなミナが美の象徴として人気が高いのは誰もがうなずけることかもしれない。
そしてそれはミナの発言する韓国語にも特徴が表れている。
TWICEといえば基本的に韓国語で会話が行われるため、日本人メンバーも台湾人メンバーも流暢に韓国語を話す。
しかし韓国人が話す日本語に特徴があるように、やはり日本人が話す韓国語にも独自の特徴がある。特にミナの場合、韓国生活が他の日本人メンバーより短いのでなおさら日本語的な韓国語の特徴がよく表れている。
凄くわかりやすく言うならばミナの発する韓国語はとても大人しい。
元々ミナの声質そのものが綺麗なことに加えて、日本語的な喋り方をするので日本人にとっては馴染みがあり美しく聞こえる、そしてネイティブの韓国人にとっても不思議な聞こえ方をするという感覚がある。
日本人にとって韓国語が時々強い音声で聞こえるのは、必ずしも韓国人が強く話そうとしているからではない。
言語の特性として韓国語は発音を強く発する構造になっており、それが普通の発音なのである。つまり韓国人は強気で話しているわけではないのに、日本人にとっては時々それが荒々しく聞こえるというギャップが言語の特性として時折起こり得る。
逆に言えば日本人が日本的な発音で韓国語を話しているとそれがとても大人しく聞こえることも当然発生する。
ミナはそういった日本人的な大人しい性格をしているので言葉の響きも大人しくなり、むしろそれが日本人のファンにっては極めて聞きやすく感じるという言語学上の仕組みがここには存在する。
もちろん逆の現象もあり、TWICEの韓国人メンバーが話す日本語はどことなく韓国語っぽい響きがあるしそれが可愛く聞こえることもある。
「ブラックスワン」に続き「不気味の谷現象」というのはこれまた学術用語の一つとして知られている。
端的に言えばロボットやCGが人間に近づく直前というのは、ロボットのようでもあり人間っぽくもあるのでどちらかわからず逆に奇妙に見えるという意味合いに近い。
この不気味の谷現象を"言語版不気味の谷現象"に当てはめるならば、あまりに日本語が上手すぎる外国人は逆に違和感を抱くという感覚に近いかもしれない。
日本語を話す外国人を見ていて、カタコト混じりで話す外国人とタメ語まで使いこなす外国人なら前者の方が好印象を抱くことがないだろうか。
敬語以外のタメ語やスラングを話しつつも、どこか日本人と違うのでむしろ辞書に書いてあるような言葉を話す外国人よりも違和感を抱くことは多い。
確かに日本語は上手いのにどこか微妙に口語の使い方が間違っていてそれがちょっと気になってしまう、それならば教科書通りのカタコト日本語の方が好印象に聞こえる、これがまさに言葉における不気味の谷現象だ。
つまりTWICEミナが話す韓国語というのは日本人にとっても慣れ親しんだ日本語風なので聞きやすく、韓国人にとってもほどよく片言の外国人に聞こえるという良さがある。
韓国人からすれば「寿司っぽい響き(=日本っぽい)の韓国語」に聞こえるので、それが好印象に受け取られているし、逆に日本人にとってもTWICEのジヒョやナヨンの話す習ったばかりの日本語の方が可愛く聞こえることに近い。
ミナの韓国語はいわば日本人の味覚向けに調理された韓国料理のように、日本語化された韓国語なので日本人にとっては親しみやすい。
そして韓国人にとってもそれが独特なちょっと韓国語と違う雰囲気があって魅力的に映る。
どの国でも片言の言葉やどこか異国情緒を感じさせる発音というのは、頑張って伝えようとして話せば好感をもたれる。その意味で日本人ももっと日本語的な発音の自身を持っていいのかもしれないし、堂々と外国語を話しても良いのかもしれない。
ミサモの3人、ミナ、サナ、モモは自分のやり方で外国語を話している、その姿はアイドルとしてだけではなく「外国語を話す日本人」としても参考にできるところがあるように思う。
日本語風の外国語を話しても何も恥ずかしい事ではない、"ミサモ"の3人が示したことに外国語学習者としてとても勇気づけられる。