本当に長い紆余曲折を経てついにバルセロナに辿り着いたブラジル代表コウチーニョが、アラベスとの試合で初先発を果たした。
移籍自体にトラブルが発生し順調ではなかった上に、いざバルセロナに到着してみるといきなり怪我からスタートだった中で今回の初スタメンは快挙だ。
そしていざ試合を見てみると決して悪くは無く、もしかしたら初ゴールもあり得たようなクオリティを示した。
ルイス・スアレスも「カンプ・ノウでのデビュー戦は難しいがフェリペは最高のクオリティを証明した、彼の貢献度に満足している」と語っており、初めから上手く行っていたわけではないスアレスがリヴァプールの元同僚の選手にこのような言葉を発すること自体に意味がある。
意外にああ見えて気が使えるのがルイス・スアレスでもある。
更に好材料として元々コウチーニョ自体がエスパニョールでスペインリーグの経験があり、実際にゴールまでしている。
プレミアリーグのリヴァプールでの活躍は圧巻だったが、それに加えてラ・リーガを既に知っているというのはこれからストロングポイントとして生きてくるだろう。
実際にボールタッチにしても、パスを出すタイミングにしても非常に上手く「スペインリーグ経験者」としての雰囲気さえ感じさせる。特にパスを出すタイミング、出す方法については才能を感じさせる。
パスを出すタイミングに関しては本当に上手いしとても気に入った。
一瞬の時間をはずしてコントロールすることに長けており、意外なタイミングや手段で、予想外の方向にパスを出すことができる。どのポジションで安定した出場機会を得るかは現状では未知数だが、中盤での輝きは既にこのアラベス戦で示したと言える。
バルセロナのリズムにフィットしていない部分があるのも事実だが、もう少し慣れてくれば違和感なく溶け込むであろう片鱗は感じさせたというのがこの試合の感想だ。
「サッカー脳」に関しては随一の存在であり、同郷のネイマール以上にこのチームに溶け込む可能性さえあるだろう。
まだリーガ・エスパニョーラでの冒険は始まったばかりであり、これから本領を発揮していくだろう。スアレス、メッシ、イニエスタのインスピレーションを吸収すればむしろプレミアリーグ時代以上の選手に成長するはずだ。
特にバルセロナの伝説的名選手ヨハン・クライフの14番を背負ったというのは覚悟を感じさせる要因の一つだ。14という背番号は時として10番以上に特別な意味を持つ事さえある背番号である。
「ファンタジスタ」という言葉が絶滅危惧種になりつつある現代サッカーにおいて、コウチーニョのプレーは貴重だ。
コウチーニョのプレーがなぜ面白いかというとそれは"フットサル感覚"でサッカーをしているからで、随所にフットサル要素を感じさせることを得意としている。
芝の上でフットサルをしている、それがコウチーニョであり今のアスリート化だけが一方的に進みつつあるサッカー界において本当に貴重なフットボーラーの1人だと言える。
そういう意味ではやはり同じブラジル代表のネイマールにもスペインへの帰還を期待したい。
ここ最近いよいよレアル・マドリードへの移籍の噂が本格化しているネイマールが戻ればバルセロナのコウチーニョVSレアル・マドリードのネイマールという新たな構図が発生する。
人口2億という世界5位の規模を持つ国でリーガ・エスパニョーラが人気になればその経済効果は計り知れない。元々ネイマールがバルセロナにいた時代に急速にブラジル国内でバルサが人気になり始め、それは従来のサッカーファンとは違う女性ファンにも人気が増えて行ったという事情がある。
ネイマールがもう一度戻ればブラジルの流行を席巻する女性ファンも再びリーガを見ることになるだろう。まして同じくハンサムなコウチーニョばバルサで地位を気付けば、ブラジルの女性たちはちょっと優しい雰囲気のコウチーニョと、イケてる感じのネイマールのどちらが好きかで盛り上がるだろう。
やはりブラジルはサッカーの国であってほしいというのが日本のサッカーファンの感覚でもあるので、是非ともこの2人の対決がスペインのエル・クラシコで実現することを期待したい。
そのブラジル人対決が実現するかどうかはともかく、まずコウチーニョがバルセロナのレベルにあるということを示しこの補強が間違いではなかったとバルセロニスタが実感する時がようやくやって来た。
これからこの14番を身につけたブラジル人フットボーラーは見る者をファンタジーの世界へといざない続けてくれるであろう。