あれほど憎んでアンチしていたクリスティアーノ・ロナウドがいなくなると、バルセロニスタも張り合いが無くなって物足りない。このどことなく迫りくる寂寥感、これぞ「ロナウドロス」とでもいうべきだろうか。
ワールドカップの狂騒も過ぎ、いよいよ欧州サッカーも新シーズンが開幕するがレアル・マドリードが獲得した大物選手と言えばクルトワくらいで、かろうじてモドリッチ残留がポジティブな話題に留まっている。
ワールドカップ後は大物選手をつれてくるという風物詩も、今季はどこか物足りない。
ジダンがCL三連覇でマドリーの指揮官を辞めたように、ロナウドも晩節を汚さないためにはいい去り際だったのだろうしメッシを超える後世の評価のためには、複数リーグで活躍したという実績が必要だという判断を下したのかもしれない。
ロナウドの不在を感じさせないためにはそれこそエムバペかエデン・アザールという旬な選手を獲得するべきだったし、それがこれまでのマドリディスモのスタイルだった。
バルセロナの方はというと、パウリーニョが中国に戻った替りにビダルを獲得したというのが一番の話題ではあるが、今更ビダルを連れてきてどうなるのかという印象はある。
もう過去の事なのでいつまでも固執するわけにはいかないが、バルサがグリーズマン獲れなかったのは補強の物足りなさを感じさせる。デンベレいるとか言われてもそこまで盛り上がらないのが現実だ。
アトレティコ・マドリード視点では朗報ではあるが、バルサ視点では新シーズンの希望が一つ消失したという形になる。
それ以上にレアル・マドリード視点でみれば、ロナウドロスは大きいだろう。
アザールを獲れないのを見るとマドリーの権威も衰えているんだろうなとか、時代はプレミアに移り変わりつつあるのだろうなとか思わなくもない。
ベイルはスペ、ベンゼマはロートル、そうなると変わりがいない。
PSG勢はがっちり移籍をガードしていて、梃子でも動かない。
そもそも今回のロシアW杯で評判を落としたネイマールを連れてきても、評判は良くないだろうしほとぼりが冷めた数年後に獲得するのが現実的だろうか。
それに加えてリーガ・エスパニョーラ自体、日本における放映権で揉めていて今季は良かったとしても毎シーズンこれが繰り返されるようだと億劫だ。高画質でサッカーを見るという時代から、遅延が日常になる配信式の時代になっていくのだろうか。それが現代の日本人のライフスタイルに合うと言えばそれまでだが、いろいろとこれまでの環境と変わっていこうとしている。
その意味でロナウドのセリエA挑戦というのはスペインサッカーにとって一つ時代のの終わりを象徴している。セリエAが復権する代わりにリーガ・エスパニョーラが没落していくのであれば寂しくもある。
ただここ最近あまりにスペイン勢がヨーロッパの舞台を支配し続けたので、そろそろ転換点を迎えなければサッカーという競技そのものの魅力を逸してしまうことになりかねない。
メッシとロナウドの二大巨頭の時代が終わった後に訪れるのは虚無感なのか、それとも新時代の到来なのか。
あまりにもこの二人が異次元の領域に入り過ぎていたことで、これからのサッカーは小粒に見えるかもしれない。
クリスティアーノ・ロナウドは良くも悪くもキャラクター性が強烈で対抗のし甲斐があった。てっきりマンチェスターUに復帰する物だと思っていただけに、未開拓のイタリアを選んだところはチャレンジャーとしての気概を感じさせる。
そういうところがCR7である所以なのだろうし、バルセロナという安全圏から出ないリオネル・メッシと比較されるところでもある。
メッシもクラブレベルではやることをやり切ってしまった上に、ワールドカップまではあと4年もある。モチベーション不足のメッシを四年間見ないといけないとするならばバルセロニスタは、良きライバルの不在を嘆くことになるだろう。
いっそのことマラドーナ越えを目指すためにナポリに行くというのもありかもしれないが、もちろんバルサに留まってほしいという思いもある。
バルセロナもバルセロナでメッシ居なくなったらどうするんだというのはあって、その点ではレアル・マドリード以上にひとりの選手に対する依存度が深刻かもしれない。
ワールドカップでこれと言っためぼしい若手が登場したわけではないし、現状思ってたほど面白いことになりそうはない。
「最近のサッカーはファンタジスタが少なくなった」とか「今のサッカー界は情熱が無い」など言われてきたが、いよいよ自分がその言葉を口にする時代が来てしまった。
ワールドカップ後の日本人選手の移籍も少し寂しく物足りないし、サッカーのルールや戦術も含めて本当に面白い方向に向かって行っているのかはわからない。
ただセリエAの復権と、Jリーグの第二次黄金期が訪れるとするならばそれはもちろん歓迎すべきことだとは思う。
異星からやって来た二人の超人がサッカー界に君臨し続けた時代はもうすぐ終わる。
そして新しい時代のためにも終わらなければならないだろう。
別れの先に新しい出会いがあると信じて、そして実際に時代を作る選手が登場することでサッカーは続いてきた。
そういった流れを永遠と続けるからこそ、サッカーは答えがないという魅力によって愛されてきた。
ロナウド自身、新しい時代への好奇心から新天地を選んだはずだ。この移籍がサッカーの世界にどんな影響を与えるか、どうなるか様子を見てみよう。