レアル・マドリードがハメス・ロドリゲスを放出してから既に長い時が流れた。
そして放出したクラブと、ハメスが加わったクラブの明暗が分かれている。
レアル・マドリードは昨シーズンが嘘だったかのように低迷し、バイエルン・ミュンヘンは新監督就任もあり持ち直しハメス・ロドリゲス本人も好調を維持している。
「憧れのジダンだったけどどうやら僕は気に入られなかった」と指揮官へのコメントを発したり、自分を放出したことが間違いだったと言いたげな意味深な発言を繰り返しているのがこのコロンビア代表のMFだ。
同僚のアリエン・ロッベンもその立場を理解しており、レアル・マドリードからバイエルン・ミュンヘンに映ったことがステップダウンではなかったと彼を擁護している。
今になって思えばなぜハメス・ロドリゲスに別れを告げなければならなかったのかは謎だが、当時としてはCL2連覇を果たしイスコとハメス・ロドリゲスという2人のタレントのどちらかを切らなければならなかった事情がある。
今はジダンのほうが悪い選択をしたかのように言われているが、昨シーズンの末期にはハメス・ロドリゲスを気遣うような起用も多くイスコが犠牲になっていた部分もある。地元スペイン人のイスコを次のシーズンに残すために、ハメス・ロドリゲスへの温情もあったのかもしれない。ただしクラブワールドカップやチャンピオンズリーグのような大舞台で起用されないことも多く、そこでハメス・ロドリゲスのモチベーションも途切れて行ったというのもまた事実だ。
イスコを選んで正解だったのか、それともハメス・ロドリゲスを選ぶべきだったのか。
レアル・マドリードの選手と言えば俗にいう「顔審査」のようなものがあり、エジルやディ・マリアは顔が理由で放出されたという噂さえ存在する。
その意味ではハメス・ロドリゲスは端正な顔立ちをしており、同時にレフティで華麗なる司令塔でもあった。これほどレアル・マドリードの10番が似合う選手も存在しないだけに今思えばもったいないという言葉も出てくる。
素行不良気味で不満を態度にあらわすことが多かったことに加えて。当時のレアル・マドリードは黄金期にあり全てがこれからも上手く行くように思えた。そしてイスコという選手が存在した、当時の判断としては放出が妥当だったと言える。
しかし今ではハメス・ロドリゲスだけでなくモラタの放出も疑問視されており、いくらレアル・マドリードと言えども層の厚さを軽視してはいけないというのがわかるシーズンになった。
替りに10番をつけたモドリッチもプレー自体は悪くないがチームの不調と重なり。尚更以前の10番、つまりハメスと別れたマドリードの未練が日に日に大きくなりつつある。
そして何より驚いたのはハメス・ロドリゲスがここまでバイエルン・ミュンヘンにフィットしていることだ。
加入当初はまだ適応できていないんじゃないかとか、もう全盛期を過ぎているリベリーのほうがよほど凄いなどと言われていたがやはり才能は本物であることを示している。
本人も信頼を得られてモチベーションが復活し、まさにロッベンのようにブンデスリーガの舞台で消えかけていた情熱を取り戻しつつある。
「ワールドカップだけの一発屋でたまたまレアル・マドリードに移籍できただけ」と揶揄されていた時代から、もう一度本領を発揮しマドリディスタを後悔させるまでに至った努力は見事だと言わざるを得ない。
プレースタイルは大きく異なるがレフティという意味ではロッベンと共通しているので、第二のロッベンとして名を刻めるかに期待がかかる。
レアル・マドリードに対する愛憎交錯する感情が彼のモチベーションになっていることは明らかだ。むしろここから更なる飛躍を遂げる可能性に満ちている。
日本代表とも再び試合が決まっているコロンビアの司令塔は、バイエルンで大きく成長し再び日本代表の前に立ちはだかるだろう。
それに関してはあまり喜ばしくはないが、レアル・マドリードを出る喜びによって開花したハメス・ロドリゲスの今後のキャリアはサッカーファンの楽しみになっていくに違いない。