韓国のサッカーファンの間でまことしやかに囁かれるフレーズがある、それは「"あの抑制器"がいないとウリ代表は強いね」だ。
実は韓国代表は先日、日本がサウジアラビアに勝った試合の時シリアに2-0で勝利して10大会目のワールドカップ本戦進出を確定させている。なんと中東に包囲された地獄のアジア最終予選を軽々突破したのだ。
当初、日本の方が楽な組に入って韓国は中東アウェーの過酷な移動が辛いと予想されていたが、難なくアジアで最初にワールドカップ行きのチケットをゲットしており、国民やメディアからポルトガル人のパウロ・ベント監督がバッシングされながらも確実に結果で示し本戦進出を決めた。
しかもなんと今の韓国代表はかつては日本のお家芸だった魅力的なパスサッカーを磨いており、「ティキタカ」にかけて「キムチタカ」と韓国の俺らみたいな不謹慎ネット民がネタにしているほど華麗なスタイルを築き上げている。
逆に日本が伊東純也頼みの守備重視フィジカルカウンターサッカーをやっており、完全に真逆となっている。
まず억제기(オクチェギ)という言葉は、直訳では抑制器で日本語で言えば銃口につけて音と発光を隠すサプレッサーという意味だ。FPSが流行っている今ではわざわざサプレッサーについて説明しなくてもわかる人は多いだろう。自分はエアソフトガンで使ったことがあるが本当に音が小さくなる。
ただ調べてみると韓国語では違い、サプレッサーは「消音器(ソウムギ)」と訳されている。銃大国アメリカでも拳銃につけると危険なので販売が規制されている凶悪機器だ。
ではこの억제기の意味はというとどうやらLOLと略されeスポーツの頂点とも言えるリーグ・オブ・レジェンドが語源らしい。
LOL用語でインヒビター、inhibitor(阻害物、邪魔するもの)とあるらしくゲームから来ている。韓国のネットではわりとlol関連の派生語はよく使われていて、さすがゲーム大国だけある。
更にどうもLoLではフェイカー(Faker)という韓国人選手が相当有名らしくて、わりと海外でも知名度があるらしい。もちろん韓国でも「陰キャがパソコンでカタカタやってるだけのeスポーツごときがイキんな」みたいな日本と同じノリもあるのだが、LoL自体が世界では有名タイトルということもありフェイカーはオタクたちからは英雄視されているようだ。
そして自分もやったことがないのでわからないが、リーグ・オブ・レジェンドにはインヒビターという阻害物的アイテムがありこれが抑制器(オッチェギ)として韓国のゲーム用語になり、転じてサッカーでも使われているという話である。
クリスティアーノ・ロナウドはよくオクチェギ扱いされている。
この억제기は日本語でまさにぴったりな同じ使われ方をしている言葉がある。
それは「蓋」である。
サッカーファンであれば聞いたことがある表現だが、前線のフォワードが一切役に立たずそこで攻撃展開が止まる場合「蓋になっている」という表現を使う。
スピードや突破力がなくボールロストが多いフォワードによく使われる。
そして本題だが韓国のネットではソン・フンミンがこの"蓋"扱いをされている。
なんせソン・フンミンが出ない最近のワールドカップ予選では連戦連勝、実は今の韓国代表はかなり強い。しかも華麗なパスサッカーを展開しており、かつての日本代表の十八番を奪われている。
更に指揮官パウロ・ベントの采配が当たりまくって、使うなと叩かれていた選手が活躍する劇的な展開になっている。
ここで俺らみたいなひねくれ者の韓国のネット民は言うわけだ。
「ソン・フンミンが出れば代表のサッカーはつまらなくなるが、お笑いネタにできてここの掲示板(日本で言う5chみたいなところ)は面白くなる」
「エムチャンミン(ニエミチャンニョ=母が娼婦、とかけあわせた蔑称)はポングル式(≒珍グランド式)の脳筋サッカーには合うが国家代表のようなポゼッションスタイルには合わない」
「どうか韓国のために引退をお願いします」
「^M^」
「次のイラン戦にチャンミンが出た時の予想=負けていつものように味方にキレて"あの表情"をする」
「バギー(パク・チソン)は逆境の時、黙って誰よりも走って態度で示した真のキャプテンだったが、代表で活躍しないウソップ(ソン・フンミン)は未熟な態度を取るのでムカつく。だから三十路になっていつまでも中小クラブの鶏小屋(トッテナム)にいる」
「あいつがいないと快適に代表の試合を見れるね」
韓国ではこのようにプロレス的にバギー団とウソップ団という二大勢力が争っているのだが中には「日本人がパク・チソンとソン・フンミンの別名を知ったら驚くだろうね。まさか二人がバギーとウソップとか話になるか笑」という意見もあるし、「活躍してもやらかしても面白いチャンミンがいなくなればいよいよ海外サッカーもつまらなくなるだろう」というツンデレ的な思いもあるわけだ。
韓国の政治家には「ソン・チャンミン」と名前を間違えられるし、信者はソンポンとして嘲笑されて英雄(ヨンウン)と思いきや意外と扱いはネタキャラである。ちなみにイ・ガンインは久保建英と同じく代表のポジションを失いかけているし、謎のKリーガーが活躍している代表となっているのでカタールワールドカップでは注目のダークホースだ。