elken’s blog

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ワールドカップ出場枠拡大が世界のサッカー人気にもたらす影響

最近のサッカーニュースで最も大きなニュースといえばやはりワールドカップの参加国拡大であろう。FIFA国際サッカー連盟の会長が変わり、2026年にはこれまでの出場枠32カ国から48か国に拡大されることになる。

このことに関してはサッカーファンの間でも賛否両論分かれており、日本だけでなく世界でもこの話題で持ちきりだ。

世界のサッカー人気拡大やサッカーのグローバル化に既存の32カ国というのがもはや追い付かなくなったのである。

 

個人的にはこの拡大に大賛成である。より巨大なビッグイベントになりサッカーが世界で盛り上がることは素晴らしいことだ。世界において32カ国というのは実は圧倒的に少数派なのである。その32カ国の人間しか当事者として本番楽しめないというのはあまりにも酷だ。

クオリティが下がる、予選の厳しさがなくなるというのは日本のような安定して出場できる国や強豪国の意見であり大多数の170か国の人間からすると非常にありがたい決定だ。日本人の立場で考えているからこの拡大に賛成できない人は多いが他の国の立場になってみたら本当に救いのような存在でもある。

結局「自国が参加できる」という事以上にうれしい物はない。結局日本でワールドカップが国民的イベントとして根付いたのは出場が現実的になったり実際に出場してからである。日本では1998年フランスワールドカップ以前の話がほとんどされないことがそれを証明している。結局のところ自国が参加できるということの喜び以上の物はなく、自国が参加できるかできないかで興味関心は変わってくるのだ。

ワールドカップ

日本でワールドカップの話になったとき1974年の西ドイツVSオランダ、1986年のマラドーナの神の手ゴールや5人抜きが語られるだけでそれ以外はほとんど語られない。大部分が最近の日本が出場した大会だけである。その有名な2つの大会ですら日本全体で見たときに語れるのはよほどのサッカーマニアだけである。

やはり物語の当事者にならなければ本当に盛り上がることはできない。

そしてそれは世界でも同じだ。

 

本当のレベルの高さを体感したければそもそも毎年チャンピオンズリーグがある。代表チームというものを率いてサッカーをし、それで巨大な大会を開くのは盛り上がることや興行として成功させること、そしてサッカーを普及させるためでもある。レベルの高い大会を開くというのは実は最優先事項ではない。ワールドカップの目的にはいくつもの理由がある。

そういうことを考えたとき、出場国の立場で批判することはナンセンスであるように思える。そもそも欧州や南米を見たときかなりハイレベルなチームでも出場できない。前回大会イブラヒモビッチが出場できなかったし、次回大会ではメッシやロッベンですら出場できない可能性がある。更に南米予選では既得権益を持つ国がほとんど決まっており、ペルーやパラグアイと言った隠れた魅力を持つ国にはなかなかチャンスが回ってこない現実がある。

更に16か国増えると聞いたとき、増えすぎではないかという声もあるが各大陸にあてはめれば実はそれほど拡大していないこともわかる。

アジア:8.5枠

アフリカ:9.5枠

北中米カリブ:6.5枠

南米:6.5枠

オセアニア:1枠

ヨーロッパ:16枠

 

南米予選はプレーオフでほぼ勝利することが確定しているという前提ならば実質2か国増えたと言えるが、南米7位のチームがプレーオフで敗退する可能性はありものすごく増えたとは感じない。コパアメリカを見てもレベルが高いだけに南米に関しては多すぎるとは言えない。

アフリカとアジアは増やし過ぎとといえば増やしすぎだが、10年後20年後のことを考えたときに今の内に拡大しておくのは正解だろう。そもそもこの地域の票が多いため今回の会長が当選したわけであり優遇されるのは必然と言える。

 

これらの地域の増枠は今の考えで行けば多すぎるように思えるが21世紀はアフリカとアジアの時代でもある。早くても2026年という10年後の世界であり、今の状況で判断することは間違っているように思う。10年後、20年後を想定してこの問題を考えなければならない。

 

日本人の感覚からすれば「アフリカ多すぎないか?」と思うかもしれないが、アフリカは地図で見ればわかるように非常に巨大な大陸であり人口もすさまじく多い。今現在教育と経済も爆発的に発展してきており、近いうちに今のアジアのように続々と経済大国、人口大国が登場する地域でもある。更にヨーロッパに近くにあるため非常にサッカーが発達しており移民選手を含めると間違いなく21世紀をリードするサッカー大陸でもある。

 

例えば今は陸上大国のケニアやタンザニアにサッカーが普及すれば、とてつもないチームが完成する可能性もある。陸上は稼げないとなったときサッカーをやり始める選手はこれから増えるだろうし、FIFAが狙うのはその部分だ。

陸上で記録を出しているようなアフリカの黒人フィジカルエリートがサッカーをすればすさまじいことになるだろう。未だに呪術が現役のアフリカだが前述のように教育水準も発展しつつある。近代化されればこれからより多くのワールドクラスの選手が誕生するだろう。

このように本当のブラックアフリカにサッカーが普及し始めれば今までサッカーファンが見てこなかったような衝撃的な選手が誕生する可能性はある。

南米が発展してストリートサッカーが少なくなってきて本能や野性味のある選手が少なくなってきている。そういう選手が今後誕生するならばまさにアフリカになる。個人的にはアフリカ枠の増大に大賛成だ。

 

そしてアジア枠の拡大に関しては我々日本人が当事者の問題でもある。

中国とインドに参加させたいというのがFIFAの狙いだが、現状この2か国はアジア8枠では足りない実力だ。インドネシアやパキスタンなども隠れた人口大国である。個人的にはウズベキスタンという国に注目していて、元々旧ソ連の構成国であるウズベキスタンはヨーロッパ的なチームとしても期待できる。

現状ですらオーストラリアが敗退しそうなことを考えると、10年後のアジアのレベルは間違いなく高まり4.5枠が少なすぎる時代になる。中国も今度こそは本当に10年後の成長を実現でき2026年に出場する可能性はある。習近平国家主席がサッカーに力を入れていることは非常に話題になっており、規模としては中国リーグが欧州のトップリーグに迫り5大リーグと言われる日が来る可能性は否定できない。

 

しかも今回の中国のサッカー強化政策は今までの表面的なものと違い、育成組織もしっかりと建設されているのが特徴だ。まだ完全に現代的なやり方とは言えないが今までに比べて格段にサッカーを知っているやり方になってきている。

昭和の日本人が中国は技術的にも経済的にも遅れてると思ってたら、いつのまにか日本に迫る国になってきている。今の子供たちは物心ついたときには中国が日本より上というのは当たり前の感覚になってきている。日本がGDPで追い抜かれてからもう大分時がたっている。

 

今の日本サッカー界にはまだ中国を下に見る風潮があるが、まるで昭和の時に日本人が「中国は人民服を着て自転車に乗っているだけの遅れた国」と見ていた時と同じように思える。経済や技術において中国への日本人の感覚は「さすがにもう下に見てはいられない」と変化したが、サッカーにおいては20世紀の感覚で中国を見ているように思える。

「8枠ですら中国は出場できないだろう」というのは今の感覚であり10年後は余裕で出場して本戦でも活躍しているかもしれないし、「いつまでも永遠の10年後を語っている国」というイメージは今度こそ通用しなくなるかもしれない。

 

ルイス・フィーゴが「中国は屋根から家を作ろうとしている」と言っていたが、実は莫大な投資を行い育成アカデミーを作っている。巨大な育成施設でサッカー少年が寮生活を送っている。10年後はまだ早いかもしれないが、10数年後は本当にその夢が実現しているかもしれない。個人的にはとにかくサッカーで盛り上がりたいので盛り上がるなら中国もインドも大歓迎である。48枠になったことで、他のアジアが強くなることで日本が出場できなくなるという不安もなくなった。サッカーの盛り上がりが今までの数倍になる可能性を考えた時サッカーファンとしては歓迎の言葉しかない。

更に48枠というのは決して多すぎる数字ではない。47都道府県の日本ではむしろなじみ深いのがこの数字だ。高校サッカー選手権や甲子園もその数で盛り上がっている。多くの都道府県が参加することで日本中が盛り上がる。甲子園が24都道府県しか参加できなかったらいくらレベルが高くても全国規模の盛り上がりにはならないだろう。

 

前述のように自国が参加し当事者になるという事は、蚊帳の外で部外者としてクオリティの高い試合を見る事よりよほど楽しいのである。

そしてその自国が出場することを楽しめるのは世界でたった32カ国しかない。

自国が参加できること以上の幸福は存在しない。それは日本人が示していることもである。

かつてワールドカップの出場枠が24枠から32枠に拡大したおかげで日本もW杯に出られるようになりその恩恵を受けてサッカー人気が拡大した。

自分たちが恩恵を受けた立場にもかかわらず、次その恩恵を受ける国に反対するというのは自分勝手でもある。日本はかつて出場枠拡大の恩恵を受けた当事者でもあるのだ。次に他のアジアの国が同じような恩恵を受けることに反対する理由がどこにあるだろうか。

 

そして最後に語らなければならないのが北中米カリブ枠の拡大だろう。

現状の3.5枠から3枠拡大し6.5枠になった。地味に一番枠を与えられてるのが北中米カリブかもしれない。個人的にアフリカアジアは納得できるとして、北中米に3枠追加で与えるなら1枠欧州に与えたほうがよかった、というのが正直な感想だ。ヨーロッパは実力国が多い割には増えていないという印象を感じる。

しかしこれも考えようで「世界にサッカーを普及する」ということを目的に考えたとき北中米カリブにはまだ数多くの可能性がある。

実際コスタリカがベスト4に行きかけたブラジルワールドカップを見ても隠れた実力国は存在する。アメリカが確実に強くなってることも同大会で証明された。

メキシコも優れているし、ホンジュラスやトリニダード・トバゴも地域強豪国と言える存在になってきている。ボルトを輩出したジャマイカがサッカーに力を入れればすさまじいことになるだろうし、他のカリブの国々も野球を見る限り優れたフィジカルを持つ選手が多い。

 

更に野球国として日本ではなじみのあるキューバも今では街中でサッカーをしている少年が多いらしく、今回のWBCのために野球の取材をしに行った日本人記者がその現実に驚いていたことが報告されている。

カストロ議長が逝去したことで野球文化の流れが変わってくるのではないか。そしてそれは他の北中米カリブ国でも同じかもしれない。

今回のWBCは大会として成長していることを示した。

サッカーファンとしてもいつまでも「WBCは一部の国しか本気ではない」と言っていられなくなってきている。

WBCが大会として成長して期いることはデータにも表れており4回目となる2017年大会は過去最高の成功と言える。野球が世界に普及してるとはまだ言えないが、将来的にWBCがサッカーのワールドカップのような権威ある大会に育つ可能性はある。

 

そうなる前に北中米枠を拡大させこの地域にもサッカーを普及させることが求められるのではないだろうか。今の考えではヨーロッパの国の方が見たい。しかし「サッカーへの投資」という事を考えたときに北中米カリブに3枠追加することは大きな投資という見方もできる。

WBCが成長したとしてもワールドカップがその数倍の速さで成長すれば何の問題もない。日本のメディアでは野球に都合の良い意見が報道されるが、有名選手が続々と移籍するMLSの盛り上がりや規模の拡大はもはやサッカーがアメリカ4大スポーツの仲間入りをしてきていることを証明している。毎年ビッグクラブが集うプレシーズンマッチの盛り上がりもとてつもないことになっている。

 

そして他の地域に比べて一番サッカー色の無い地域であるがゆえに、3枠拡大することの効果は大きい。これまでアメリカ、メキシコに加えあとはトリニダード・トバゴ、ホンジュラス、コスタリカなどの地域強豪国のどこかであり他の国々には夢がなかった。南米並に上位層が確立されていて中堅国には厳しい予選でもあった。そう考えたときにこの増枠は現実的な夢を追いかけられるようになり北中米カリブの各国がサッカーに力を入れる可能性は出てくる。

そういった北中米カリブの実情を考えたときにこの増枠には非常に大きな意味がある。もはやどこの地域予選でも「枠が多すぎる」という考え方はできない程世界のサッカーのレベルが全体的に向上してきている。それぞれの国で夢を見れる国が増えるということはサッカーの普及や人気拡大にも貢献する。

 

それでサッカーをする人が増えてより競争のレベルが高まればサッカーはハイレベルになる。もっとすごい選手が地球上のあらゆる国から登場するかもしれない。

ワールドカップの「密度」という意味では確かに下がる可能性はあるが試合数は増えて見れる試合は多くなる。大会期間の1か月により多くの試合を楽しめることは世界がサッカーに盛り上がるお祭りとして考えたら素晴らしい事である。

 

更にサッカーはワールドカップだけではない。今までサッカーに本気でなかった国が本気になることで今まででは考えられないような選手や強豪国が登場する未来も考えられる。そう言った選手が今度はチャンピオンズリーグなどを盛り上げてくれるかもしれない。

「サッカーが面白くなる」という意味では今回の出場枠拡大に賛成である。10年後、20年後のサッカーに期待せずにはいられない。

ワールドサッカーダイジェスト増刊 2018ロシアワールドカップ展望&ガイド 2018年