ついに柴崎岳にリーガ・エスパニョーラ1部への挑戦の機会が巡ってきた。
プレーオフで昇格を果たしたヘタフェとの4年契約が実現したようだ。
昇格の1枠を争うプレーオフにおいて柴崎岳が大きな活躍をしたことは記憶に新しい。その後スペインリーグの1部のクラブからオファーが多く舞い込んできているという報道がされたものの、大部分が代理人の売り込みであり事実ではないということが明るみになっていた。
そのため柴崎岳の個人昇格は不安視されていたが、今回無事にヘタフェCFに移籍が決まる運びとなった。
この移籍で面白いところがテネリフェがプレーオフ昇格を阻まれた相手がまさにヘタフェでありそのチームに移籍するという事である。
テネリフェサポーターからすれば複雑な心境はあるかもしれないが、二試合を戦ったヘタフェには柴崎岳が強く印象に残ったのかもしれない。
いずれにせよこの今後4年前後リーガ・エスパニョーラで奮闘する柴崎岳が見れることはファンにとっても嬉しい知らせだと言える。
唯一心配なことはヘタフェが無事来季リーガ1部に残留できるかということであり、この契約が4年間にわたって1部でプレーすることを保証するものではない。
その場合は別のチームに移籍することが多いが、現実的には降格の可能性も視野に入れなければならない戦力ではある。
その一方で昇格チームというのは日本人選手にとって縁起が良い。
レスターでプレミアリーグ優勝を果たした岡崎慎司、そして今では順位においてスペインの中堅と言っても過言ではないエイバルに所属する乾貴士らはその代表例だろう。
またこの移籍において最も大きな利点はスペイン本土を生活拠点にできるという事でもある。
テネリフェや移籍の噂が取りざたされていたラス・パルマスはカナリア諸島をホームタウンとしており、緯度で見た場合実質アフリカに近い場所にある。
スペインという国はEUに所属しているため本土を生活拠点にすれば、他のヨーロッパ地域の国々にも足を運びやすくなる。また同じリーグでプレーする乾貴士と合う機会が増えることは海外でプレーすることの支えになるかもしれない。
レアル・マドリードに2点決めた男とバルセロナに2点決めた男の対談はお互い良い刺激をもたらすのではないか、そんな想像も楽しみだ。
更にリーガ・エスパニョーラ1部にたどり着く新しいルートとしても今回の柴崎岳の移籍は後の日本人選手にとっても大きな足跡となるだろう。
似たようなパターンとしてはブンデスリーガ2部で武者修行して1部昇格を果たした大迫勇也がいる。いわば大迫勇也ルートのスペイン版が柴崎岳ルートでもあり、2部で少しの間プレーに慣れるというのはトップリーグへの適応や昇格に大きく役立つのではないか。
柴崎岳の場合は少し特殊なケースだが、スペインに行きたければまずは2部を目指すという事の方が良いのかもしれない。今までスペインリーグに挑戦した日本人選手の多くがいきなり1部に挑戦してその壁に跳ね返され続けてきた。
直接1部リーグに移籍してスペインにおける地位を築くことができたのはこれまで実質的には乾貴士しか存在しない。
とはいえまだ柴崎岳がリーガ・エスパニョーラ1部で通用すると確定したわけではなくこれから長い戦いが始まる。
リオネル・メッシやクリスティアーノ・ロナウド、ネイマール、グリーズマン、モドリッチ、イニエスタ、綺羅星のごとく輝くスターがしのぎを削るこのリーグにいよいよ柴崎岳が足を踏み入れようとしている。
クラブワールドカップ決勝でどんな試合も手を抜かないモドリッチよりも活躍していた柴崎ならそのスターの一員になる可能性すら否定できるものではない。
バルセロナが獲得のターゲットをヴェラッティから柴崎に変更する可能性も無いとは言い切れない。大袈裟な予想かもしれないが、選手本人はそういった大志を抱いて挑戦しようとしているだろう
「早く海外に移籍したほうがいい」「もう海外に移籍する気はないのか」と言われてた頃を思えばここまでの時間は長かったようにも思える。
ただ決して焦ることなく着実にステップアップを重ね、今までの時間のすべてが無駄ではなかったようにも思う。
宇佐美貴史や宮市亮の現状を見ていると、急がずしっかりJリーグで経験を積んでから移籍したほうが良い場合もある。
海外に早く行くべきだと主張している急先鋒の本田圭佑も実は名古屋グランパスでしっかりと経験を積んでいるし、香川真司に至ってはJ2まで経験している。
そういう意味で柴崎岳の鹿島アントラーズ時代の経験は間違いなく今に生きているのかもしれない。
テネリフェ移籍当初苦しんだこともタフなメンタルに磨きをかけただろうし、青森山田時代に雪の中でサッカーをしていた経験もおそらく今に脈々と通じているのではないか。
ちなみに今回の移籍に関して自分はかつての記事で「もう1年スペイン2部でやってもいいのではないか」と以前主張していた。堅実にもう1年下部リーグで武者修行して、来年のワールドカップで活躍して大きなオファーを勝ち取ればいいのではないかと考えていた。
ただ同時に、来年のワールドカップに出場することや活躍することを目指すならば1部に挑戦する機会があるなら目指すべきではないかとも思っていたため、今回の移籍はポジティブに思える。
確かにいくら2部で活躍したところで「日本代表のスタメン」としては扱われない可能性が高く、現状ハリルホジッチ監督も柴崎を招聘していない。乾貴士のケースを見ればリーガ1部での活躍が必ずしも日本代表スタメンの地位を確約するものではないことはわかる。
しかし代表の中盤は層が厚いため新しい選手が割って入るにはトップリーグでの活躍が実績として必要になることは間違いない。
このヘタフェでの挑戦が今後の柴崎岳のキャリア、そして日本代表にどのような影響を与えるか。
いよいよ柴崎岳が夢見ていたリーガ・エスパニョーラでの戦いが目前に迫っている。