この冬の季節にもなってくると、猫も寒いのか人肌をいつも以上に求めてくる。そしてそれは人間のこちらもお互い様だ。
猫はどうやら猫同士の領域という概念はあるが、人間という別の生命体に対してはその意識がが働かないようである。
確かに人間のこちらとしても席を取られていても不満ではない。例えば人間でどれだけ信頼の置ける相手でも、いきなり席を外したときに帰ってきてそこにいたら「おまえは、何をしているんだ?」と思う。
ドッキリかなにかかい、と。
ところが猫がちょっと外した先に自分が座っていた体温を求めて悪気もなく占領していると笑える。
布団でもチェアでも同じこと。
さっきまでこたつの中に入ってたのに、そこから出てきて自分のチェアに白い物体がある。
こういうときは「何しとんの?おっさん(自分の方が10倍生きているが)、どいてくれや。そこワイの席や」と言いながら渋々持ち上げて放り出す。そしたら横で大人しくまただらけている。その後またこたつに入りたそうだったら入れてやるし、自分が声を出すとダルいのか尻尾でちょくちょく触れて応答してくる。布団でも同じことで、領土をいつの間にか侵食されてはいるし、遠くにいればて来なよといえば親を見つけた子どものように駆け足で寄ってくる。
猫のいいところってこれでイラつかないどころか微笑ましくなるところだ。
だってそういう生き物なんだから、という前提や了解がある上で飼っている。
「上下関係」という概念が一切無効化されている世界なので、どうでもいいわけだ。
これが人間的な上下関係がある犬だとちょっと違和感がある。犬は人間が狩猟社会に溶け込ませた存在なので絶対そういった本能が組み込まれているからだ。
犬が自分の布団を堂々と占領して、ちょっと席外してる隙に待たず椅子まで何度も占領していたらそれはしつけ不足だ。ここは叱らなければならない場面だ。
でもネコだと人間とは別のリズムと論理で生きている生命体なので可愛いという感情以外ない。猫も一応は叱るが、ネコが聞くことはないし聞かせようと思って本気で言うことはない。
ものどける感覚でしかない笑
お互い無礼にし合う関係でもあるし「同居人」なのだ。
家に来て好き勝手してる友達で、逆にこっちもそいつの家や部屋を勝手に使うみたいな。
持ち上げて、雑なぐらいにどいてくれと追い出したらまたいいところに乗ってきたり横に来たりしてゴロゴロと言い出すし顔も舐めてくる。
人間としてはどうせ自分に寄ってくる、猫としてはどうせ自分を可愛がる、そういう暗黙の了解で上下関係というより駆け引きだ。わかりやすい共依存でもあるし相思相愛だ。
犬が人間関係の延長だとしたら、猫は人間関係とは別次元の異なる論理で不思議な生き物という前提があるから気楽なわけだ。
だから陰キャやコミュ障には相性がいい。
陰キャの自分もこの人見知りの愛猫と、こうして不思議な繊細な相性がある。
犬は躾の過不足が現れていると露骨にわかるが、猫はそもそもそういう生き物じゃない。
猫はまず飼い主だのご主人様だのという概念で飼うと悟られる。その考えで飼っていると、懐かない、従わない、愛想が良くない、と思ってしまう。それは犬を飼う時の考え方だ。
犬の前では人間の倫理を持ち込んだ関係であり、猫の前では人間ではない人間的倫理を捨てた謎の生き物にならないといけない。
犬は人間社会の仕組みに溶け込んできた家族的な生き物だとすれば、猫は人間と都合良く付かず離れず生きてきたご近所さんだ。
そこから信頼あるご近所さんにしていくためには、人間といううちの論理を押し付けては行けない。
もちろん優しく叱ることもあるけども、基本はそんなこと猫は聞いてないしいつの間にか悪さはしないようになっている。それが不思議と猫だ。
最初はやってた人間の食べ物に手を出したり生ゴミイジるのは、ちょくちょく叱ってはいたけど飽きたみたいで一切しなくなった。
猫ってそんなもん
脱走癖もなければカーテン引きちぎったり壁引っ掻いたりなんてことも全然しない。これは個体差もあるだろうけども。
犬というのはそういう上下関係無しで、自由に飼いたいと思ってもどうしてもそういう本能がある。
狼時代から集団の狩りをするために必要な厳格なライフスタイルを本能に叩き込まれているので、舐められて上下の序列つけられると終わりでそれが現れる。そして人間サイドも犬に対してそう思ってしまうし、そうしなければ関係は崩壊する。
常に下剋上を狙っている犬が尊敬無しで飼い主を愛するときはない。だから躾を怠ってはいけない。犬から人間に対する愛は尊敬や服従と不可分なわけだ。舐められていればそれは愛ではない。絶対にしつけなければならない。
しかし猫の場合は人間で言う異性と同じで合理的な理由なく「ただ好きか嫌いか」それしかない。それしかないから難しいけど、フィーリングの問題というやつだ。
だから時々おかしな行動もするしそれを楽しめるかどうかだ。
犬が自分の席に離れたとき飼い主がいたところに堂々と座っている、これは明らかに人間のマナーをしつけきれていないし、これはどこかで舐めているところがある。
逆に、猫がこの場合は悪気のない信頼だ。単に温かいとか心地よい、落ち着く、そこにいたいからそれだけ。追い出したら適当に悪気もなくふてぶてしくも可愛くも横にいる。
犬と猫、こういうところに好みや性格の違いは現れる。もちろん個体差はあるけどまずこの性質の差を前提で飼うことを選んでほしいと思うし、どちらも合う人にはものすごく合う生き物である。